AI概要
【事案の概要】 被告人は、実父であるA(当時56歳)の認知症の進行を少しでも遅らせたいとの思いから、同人に学習ドリルへの取組や家事等の日課をさせていた。令和6年1月2日午後7時頃から翌3日午後6時21分頃までの間に、被害者が日課の学習ドリルに取り組まなかったことなどに立腹し、札幌市内の被告人方において、2回にわたり、被害者の脇腹及び背部等を右手の拳で複数回殴るなどの暴行を加えた。この暴行により、被害者は多発肋骨骨折、左血胸、右血胸等の傷害を負い、同日午後8時58分頃、搬送先の病院において外傷性ショックにより死亡した。被告人は傷害致死罪(刑法205条)で起訴された。 なお、被告人は経済的に余裕のない家庭において、まだ若い被害者が認知症を発症する中、認知症に関する十分な知識や家族の協力もないまま、被害者への対応を一人で担っていたという事情があった。もっとも、被害者の介護が重い負担となっていたという状況にはなかった。 【判旨(量刑)】 裁判所は、被告人を懲役4年6月に処した(求刑懲役6年、弁護人の科刑意見は執行猶予)。 量刑の理由として、裁判所は以下の点を考慮した。まず犯情について、被告人は2度の機会にわたり、無抵抗の被害者に対してその背後から、脇腹や背中といった身体の重要部分を、多数の肋骨骨折等を生じさせるほどの強さで複数回殴るなどしており、母親に制止されても暴行を続けたことがあるなど、暴行態様は危険かつ悪質であると指摘した。被害者の尊い命が失われたという結果の重大性に加え、逃げ場のない自宅内で息子から暴行を受けて絶命した被害者の肉体的・精神的苦痛も大きかったと推察した。動機についても、被害者が自己の思い通りにならないことに立腹して落ち度のない被害者に強度の暴行に及んだことは余りに短絡的かつ身勝手であり、酌量の余地はないとした。 以上から、本件の犯情は悪く、家族関係を動機とする親に対する凶器を用いない傷害致死1件の同種事案の中では、中程度からやや重めの部類に位置づけられ、基本的に実刑が相当な事案と判断した。 一般情状としては、被告人が被害者の異変に気付いて救命に尽力したこと、公判廷で行政に相談するなどして二度と同様の行為をしないことを誓うなど反省の態度が見られること、被害者遺族である母親や姉が被告人の処罰を望んでいないことを被告人に有利な事情として酌みつつも、その考慮には限度があるとし、実刑が相当であると結論づけた。