AI概要
【事案の概要】 被告人は、愛知県弁護士会に所属する弁護士であった者である。被告人は、主に扱っていた消費者関連事件の減少や弁護士の増加、県弁護士会の副会長就任等により弁護士収入が減少する一方、クラブ等での支出をやめられず、次第に事務所経営がひっ迫して自転車操業状態に陥っていた。 そのような中、被告人は2件の業務上横領に及んだ。第1の犯行として、日本司法支援センターの代理援助制度を利用して受任した強制執行事件において、平成29年1月から2月にかけて、依頼者Aのために業務上預かり保管していた生命保険解約払戻金約325万円を含む預金口座から、45回にわたり合計約325万円を着服した。第2の犯行として、交通事故の損害賠償請求事件において、令和2年12月から令和3年2月にかけて、依頼者Jのために業務上預かり保管していた損害賠償保険金約236万円を含む預金口座から、46回にわたり合計約230万円を着服した。被害総額は合計約555万円に上り、いずれも自己の用途に費消された。 【判旨(量刑)】 裁判所は、被告人を懲役2年6月の実刑に処した(求刑:懲役3年6月)。未決勾留日数中130日がその刑に算入された。 量刑の理由として、裁判所は、依頼者の権利を守るべき立場にある弁護士がその権限を悪用して依頼者の権利を著しく損なわせ、ひいては弁護士に対する社会的信用をも失墜させたものであり、犯行内容の悪質性は甚だしいと指摘した。被害総額も550万円余りと多額に上る一方、被告人は全額を費消しており何らの被害弁償もしていないことも重視された。 他方、被告人にはこれまで前科がないこと、本件犯行を認めていること、今後の収入の中から被害弁償を続けていく旨述べるなど反省の態度を示していること、知人の弁護士が今後の更生への協力を約束していることといった被告人に有利な情状を考慮しても、実刑は免れないと判断された。