AI概要
【事案の概要】 本件は、宿泊施設の集客サービスやホームページ制作等を提供する原告(株式会社たび寅)が、旅館「栄太郎」を運営する被告(有限会社栄太郎)に対し、2つの請求を行った事案である。第1に、原告と被告との間で締結されたコンピューターメンテナンス契約(インターネットを通じたホテル予約システム・ホームページ制作等を目的とする契約)に基づく未払利用料11万3854円の支払を求めた。第2に、同契約の解約後、被告が原告の撮影した旅館施設・料理の写真や宿泊プラン紹介文章を、被告ホームページや楽天トラベル・じゃらん等の旅行予約サイトに無断で掲載し続けたことが、原告の著作権(複製権・翻案権・公衆送信権)及び著作者人格権(同一性保持権)を侵害するとして、損害賠償260万円(著作権侵害210万円+無形損害50万円)及び新聞への謝罪広告の掲載を求めた。未払利用料については当事者間に争いがなかった。 【争点】 主な争点は、①写真・文章の著作物性及び著作者、②著作権侵害の成否(被告の使用許諾の抗弁及び原告の削除義務の主張を含む)、③著作者人格権侵害の成否、④損害額、⑤謝罪広告の必要性であった。被告は、写真は旅館側の指示に基づき撮影されたもので創作性がなく、文章も客観的事実の記載にすぎないと主張した。また、契約解約後も再契約協議中は掲載の許諾があったこと、予約サイトの写真削除は原告の義務であったことを主張して著作権侵害を争った。損害額についても、原告主張の1点1万円の基準は不当に高額であると反論した。 【判旨】 裁判所は、写真について、被写体の選択・構図、カメラアングル及び照明等を調整して撮影されたものであり、撮影者の個性が表れているとして著作物性を認め、文章についても、宿泊プラン等の魅力を伝えるために表現を選択して作成された相当な長さのものであるとして著作物性を肯定した。いずれも職務著作(著作権法15条1項)として原告に著作権が帰属すると認定した。著作権侵害については、被告の使用許諾の抗弁を排斥し(再契約協議中のメールに許諾をうかがわせる記載はなく、むしろ原告は不正利用に抗議していた)、原告の削除義務の主張も退けた(契約書に終了後の取扱いの定めはなく、被告自身が予約サイトにログインして削除可能であった)。損害額については、原告主張の1点1万円の基準は本件の参考にできないとし、契約に基づく月額利用料の平均約8万5000円を基礎に、掲載期間約6.6か月分の56万1000円を著作権侵害の損害と認定した。著作者人格権侵害による無形損害は5万円とし、謝罪広告の必要性は否定した。結論として、未払利用料と合わせ72万4854円及び遅延損害金の支払を命じた(請求額271万3854円の約4分の1の認容)。