賃料減額等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、地方住宅供給公社法(公社法)に基づく地方住宅供給公社(被上告人)が神奈川県内で賃貸する公社住宅の賃借人である上告人らが、家賃の減額等を求めた事案である。被上告人は、平成16年4月から平成30年4月までの間、おおむね3年ごとに家賃を改定する旨を通知し、月額3万9530円ないし5万6350円であった家賃を、最終的に月額6万1950円ないし8万6910円に引き上げた。上告人らは、この家賃改定のうち適正賃料を超える部分は効力を生じないと主張し、家賃の額の確認を求めるとともに、不当利得返還請求権に基づき過払家賃の返還等を求めた。原審(東京高裁)は、公社規則16条2項が借地借家法32条1項(賃料増減請求権)に対する特別規定に当たるとして同項の適用を否定し、上告人らの主位的請求を棄却した。 【争点】 地方住宅供給公社が賃貸する公社住宅の使用関係に、借地借家法32条1項(賃料増減請求権の規定)の適用があるか。すなわち、公社法24条の委任を受けた公社規則16条2項が、借地借家法32条1項の適用を排除する特別規定に該当するか否かが争われた。 【判旨】 最高裁は、原判決を破棄し、東京高裁に差し戻した。まず、地方公社は勤労者に良好な集団住宅を供給することを目的とする法人であり、公社住宅の使用関係は私法上の賃貸借関係であるから、法令に特別の定めがない限り借地借家法の適用があるとした。次に、公社法24条の趣旨について、地方公社の公共的性格に鑑み、業務上の規律として補完的・加重的な基準を国土交通省令に委ねるものであると解した。そのため、省令において借地借家法32条1項の適用を排除し、地方公社に同項とは別の家賃変更に係る形成権を付与することは、公社法24条の委任の範囲に含まれないと判断した。また、公社規則16条2項の文言からも、同項は家賃変更時に従うべき補完的・加重的な基準を示したにすぎず、借地借家法32条1項の適用を排除する規定ではないとした。本判決は、公社住宅の賃借人にも借地借家法上の賃料増減請求権が認められることを最高裁として初めて明確にしたものであり、全国の公社住宅の賃借人の権利保護に重要な意義を有する。裁判官全員一致の意見である。