著作権侵害差止等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、熊本県で木工製品を制作・販売する個人事業主である原告が、広島市で店舗を運営する被告P2及びハンドクラフト作家である被告P3に対し、著作権侵害を主張した事案である。原告は平成30年頃から、円柱型のストレートガラスカップに装飾的な木製の蓋を付した保存容器(キャニスター)を「P10」と称して制作・販売していた。蓋には、先端の球体やしずく型の装飾、中段の円盤型装飾、下段の円錐型形状という3段構成のフィニアル(装飾的突起)が施されていた。令和2年1月、被告P2側から原告作品の取扱いを申し込まれたが、原告はこれを断った。その後、被告P3が類似のキャニスターを制作し、令和4年10月から被告店舗で展示・販売が開始された。原告は被告らに販売中止を求めたが応じられず、被告P3は原告のインスタグラムアカウントをブロックした。原告は、被告らの行為が著作権(複製権又は翻案権、譲渡権)及び著作者人格権(氏名表示権)を侵害するとして、差止め、廃棄及び500万円の損害賠償を求めた。 【争点】 主な争点は、①原告各作品の著作物性の有無、②複製又は翻案の有無(依拠性を含む)、③氏名表示権侵害の有無である。原告は、木製蓋のフィニアル装飾がチェスの駒を彷彿とさせる独自のデザインであり、美的鑑賞の対象となる著作物に該当すると主張した。被告らは、原告作品は実用品であり、蓋の装飾はありふれたフィニアルのデザインにすぎず著作物性がないこと、また被告P3はイギリスの伝統的デザインやチェスの駒を参考に独自に制作したもので依拠性がないことを主張した。 【判旨】 大阪地裁は、原告の請求をすべて棄却した。まず著作物性について、応用美術(実用品)が著作物として保護されるには、実用目的を達成するために必要な機能に係る構成と分離して、美術鑑賞の対象となり得る美的特性である創作的表現を備えている部分を把握できることが必要であるとの判断基準を示した。そのうえで、木製蓋の3段構成(略球形・円盤型・円錐型とくびれ)は、持ち運びや蓋の着脱を容易にするための実用的構成であり、実用目的と分離した美的特性を備えているとはいえないとした。さらに、仮に実用目的と分離できる部分があるとしても、同様の木製装飾は骨董品や家具で古くから広く用いられており、原告の制作以前にも類似の作品が存在していたことから、ありふれた表現であって創作性がないと判断した。依拠性についても、両作品の形状には複数の相違点があり作品の印象にも相応の差異があること等から、依拠性を認めることはできないとした。