難民不認定処分取消等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 チュニジア国籍の外国人男性である原告は、同性愛者(ゲイ)であることを理由に、チュニジアにおいて家族から自宅に監禁された上で暴行を受けたり、家族が運転する車両にひき殺されそうになったりしたほか、警察に保護を求めたところ、逮捕を示唆されて保護を受けられなかったことから、帰国すれば迫害を受けるおそれがあるとして、出入国管理及び難民認定法に基づき難民認定申請をした。しかし、大阪出入国在留管理局長は難民の認定をしない処分(本件不認定処分)をし、法務大臣も審査請求を棄却する裁決(本件裁決)をした。本件は、原告が本件不認定処分及び本件裁決の各取消しを求めた事案である。なお、チュニジアでは同性間の合意による性交が刑法230条により3年以下の懲役刑とされており、「倫理及び公衆道徳の侵害」を処罰する同法226条もLGBTの人々に対して適用されている。 【争点】 主たる争点は、原告の難民該当性(争点1)及び本件裁決の手続的違法の有無(争点2)である。争点1では、原告が「特定の社会的集団の構成員であること」を理由に「迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有する」か否かが問題となった。被告(国)は、原告が家族から迫害を受けたとする事実の立証が不十分であること、チュニジア政府がLGBTに対する私人間の違法行為を放置・助長している特別な事情はないこと、同性愛を理由に逮捕される現実的なおそれはないことなどを主張した。 【判旨】 裁判所は、原告の難民該当性を認め、本件不認定処分を取り消した。まず、チュニジアにおけるLGBTの状況について、米国国務省報告書やドイツ財団声明等の各種報告に基づき、同性間性交処罰規定が効力を維持し、警察等が同規定や倫理侵害処罰規定を積極的に適用してLGBTの人々を逮捕・訴追していること、LGBTであることをうかがわせる外見や振る舞いだけでも逮捕の対象となり得ること、社会的な差別や暴力が深刻であるにもかかわらず被害の報告が躊躇されている状況にあることを認定した。次に、原告の供述について、家族からの監禁・暴行、車両による加害、警察での拒絶に関する供述は、入国後速やかに難民認定申請をしていることとも整合し、全体として信用できると判断した。その上で、原告は同性愛者として「特定の社会的集団の構成員」に該当し、帰国すれば家族から危害を加えられる現実的おそれがあり、かつチュニジア政府はLGBTに対する非国家主体からの迫害に効果的保護を与えることを拒否していると評価した。さらに、同性愛者であることを理由に国家機関から逮捕等の身体拘束や訴追を受ける現実的おそれもあるとし、性的指向の抑制・秘匿を期待することは人間の尊厳の観点から相当でないとして、原告は難民に該当すると結論づけた。なお、本件裁決の取消請求は、本件不認定処分が取り消されることにより訴えの利益が消滅したとして却下された。