退職慰労金等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 株式会社テレビ宮崎の代表取締役を退任した被上告人が、株主総会から退職慰労金の決定を委任された取締役会において、代表取締役である上告人Y1の故意又は過失により委任の範囲を超える減額がなされたと主張し、上告人Y1に対しては民法709条に基づき、上告人会社に対しては会社法350条に基づき、損害賠償等を求めた事案である。 被上告人は平成16年に上告人会社の代表取締役に就任したが、在任中、社内規程の上限を超える宿泊費等の受領(超過分約1610万円)、その源泉徴収税相当額を会社に転嫁する目的での報酬増額、交際費の過剰支出(超過分合計約1億79万円)、海外旅費規程の改定による過剰な支度金支出、文化芸術活動支援事業の過剰支出(約2億558万円)など、合計約3億5551万円の損害を上告人会社に与えた。被上告人の退任後、株主総会は退職慰労金の決定を取締役会に一任し、取締役会は中立的な調査委員会の報告書を踏まえて審議した結果、基準額3億7720万円から損害額の約90%を控除した5700万円を退職慰労金として支給する旨の決議をした。 【争点】 取締役退任慰労金内規の減額規定に基づく取締役会決議に、裁量権の範囲の逸脱又は濫用があるか否か。 【判旨】 最高裁は原判決を破棄し、被上告人の請求をいずれも棄却した。本件減額規定の趣旨は、取締役会が取締役の在任中の行為について適切な制裁を課し、職務執行の適正を図ることにあると解した上で、取締役会は、退任取締役が会社に特に重大な損害を与えたという評価の基礎となった行為の内容・性質、会社が受けた影響、退任取締役の地位等の事情を総合考慮して判断すべきであり、この点について広い裁量権を有するとした。裁量権の逸脱・濫用があるといえるのは、取締役会の判断が株主総会の委任の趣旨に照らして不合理である場合に限られるとした。 本件では、被上告人の行為が特別背任罪に該当する疑いも指摘されるほど悪質であったこと、利害関係のない専門家で構成された調査委員会の報告書に基づき相当程度実質的な審議が行われたこと等を総合考慮し、退職慰労金を5700万円とした取締役会の判断は株主総会の委任の趣旨に照らして不合理とはいえず、裁量権の逸脱・濫用はないと判断した。裁判官全員一致の意見である。