閲覧等制限の申立て事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、最高裁判所に係属中の退職慰労金等請求事件(基本事件)において、上告人である株式会社テレビ宮崎(申立人)が、上告受理申立て理由補充書の一部記載について、民事訴訟法92条1項2号に規定する「営業秘密」に該当するとして、秘密保護のための閲覧等の制限を申し立てた事案である。 基本事件は、申立人の元代表取締役に対する退職慰労金不支給をめぐる紛争であり、申立人が閲覧等の制限を求めた記載部分は、調査委員会が作成した最終報告書の引用部分で、元代表取締役の行為の悪質性、申立人に与えた損害の重大性、及び退職慰労金不支給決定の正当性に関する内容であった。申立人は、これらが外部に知られると競合他社に事業情報が利用され、業界内の地位が低下するおそれがあると主張した。 【争点】 上告受理申立て理由補充書の記載部分が、不正競争防止法2条6項に規定する営業秘密(秘密管理性・有用性・非公然性の三要件)に該当し、民事訴訟法92条1項2号に基づく閲覧等の制限が認められるか。 【判旨】 最高裁第一小法廷は、裁判官全員一致の意見で本件申立てを却下した。訴訟記録の閲覧等の制限は、憲法82条の裁判公開原則をより徹底する趣旨で設けられた訴訟記録公開制度(民事訴訟法91条)の重大な例外であるから、保護される秘密は必要最小限に限定されるべきであるとした。その上で、本件記載部分は内容自体から有用性の要件を欠くことが明らかであり、申立人は三要件を具備する根拠となる具体的事情を主張せず、疎明資料も提出していないことから、営業秘密該当性の疎明を欠き、申立ては理由がないと判断した。 【補足意見】 深山卓也裁判官は補足意見において、近年、民事訴訟法92条1項2号による閲覧等制限の申立てにおいて、営業秘密該当性の疎明が十分にされていない事案が少なからず見受けられることを指摘し、本件却下の理由を敷衍した。この補足意見は、訴訟記録の公開原則を安易に制限すべきではないとの実務への警鐘として、閲覧等制限の申立てにおける疎明の在り方について重要な指針を示すものである。