AI概要
【事案の概要】 本件は、商標登録無効審判請求に係る不成立審決の取消訴訟である。原告(デンツプライシロナインコーポレーテッド)は、米国とドイツの歯科医療用製品メーカーが合併して設立された世界的企業であり、その日本子会社であるデンツプライシロナ株式会社(デ社)を通じて歯科用材料・歯科用医療機器の製造販売を行っている。デ社は昭和23年に「三金工業株式会社」として設立され、約100年にわたり「三金」の名称を使用してきた歴史を持つ。 被告(株式会社DentalBank)は、「三金工業」(標準文字)の商標(本件商標)を平成29年に出願し登録を受けた。被告の子会社であるギコウ社は、デ社から歯科技工所の事業を一部承継し、さらに原告の那須工場の事業買収を申し入れた際、「三金」の名称が矯正歯科分野で高いブランド力を有することを自認していた。原告は、本件商標が引用商標(「Sankin」「サンキン」の二段構成)と類似するなどとして、商標法4条1項11号・15号・19号・7号の各該当性を主張し、審決の取消しを求めた。 【争点】 (1) 本件商標の商標法4条1項11号該当性(引用商標との類似性) (2) 同項15号該当性(出所混同のおそれ) (3) 同項19号該当性(不正の目的による出願) (4) 同項7号該当性(公序良俗違反) 【判旨】 知財高裁は、審決を一部取り消し、一部の請求を棄却した。 まず11号について、裁判所は、「工業」の部分は産業分野を示す一般名詞で出所識別力がないのに対し、「三金」の部分はデ社が長年にわたり商号や商品名に使用してきた歴史的経緯から、歯科医療関係者の間でデ社又はその商品を表すものとして広く認識されていたと認定した。本件商標から「三金」部分を分離観察することは許されるとし、「三金」と引用商標は称呼が同一で観念も共通するため類似すると判断した。指定商品のうち薬剤・衛生用品・歯科用材料・医療機器等及び「義歯の加工」の役務については引用商標の指定商品と同一又は類似するとして11号該当性を認めた。ただし、乳幼児用食品やマッサージ器等については類似性を否定した。 15号については、「金属の加工」「セラミックの加工」「3Dプリンターの貸与」等の役務は歯科医療分野と密接に関連しており、歯科医療関係者において出所混同のおそれがあるとして該当性を認めた。 一方、19号(不正目的)及び7号(公序良俗違反)については、被告が本件商標を実際に使用した事情がないこと、デ社が出願前に「三金」を含まない商号に変更していたこと等から、いずれも該当しないとした。