AI概要
【事案の概要】 被告人は、情報システムの企画・開発等を目的とするB株式会社の派遣社員として、テレマーケティングシステムのサーバコンピュータに関する運用保守業務に従事していた者である。被告人は、同社から同サーバへのアクセス権を付与され、同社の営業秘密であるA社の顧客情報等を示されていた。 被告人は、不正の利益を得る目的で、令和5年1月17日、大阪市内の運用保守拠点において、B株式会社から貸与されていた業務用パソコンを操作してサーバコンピュータにアクセスし、A社の顧客の氏名・住所・電話番号等の個人情報が記録された34個のファイルデータをダウンロードして複製を作成する方法により営業秘密を領得した。さらに同日、領得したファイルデータを圧縮ファイルとして電子メールに添付し、株式会社Cの取締役Dに対して送信することにより営業秘密を開示した。被告人は、本件以前にも同様の手口で個人情報を領得・売却することを長期間にわたり繰り返していたことを自認している。 不正競争防止法違反(営業秘密の不正領得及び不正開示)として起訴された事案である。 【判旨(量刑)】 裁判所は、懲役3年及び罰金100万円(求刑どおり)を言い渡し、懲役刑について4年間の執行猶予を付した。 量刑の理由として、裁判所は、領得・開示された営業秘密がB株式会社のシステムを利用していた企業の顧客個人情報であり、部外者が容易に入手できないものであって、外部への漏洩はB株式会社の信用を根幹から失わせ、経営基盤に大きな打撃を与えかねないこと、さらにシステム利用企業の経営やその顧客の生活にも大きな影響を及ぼしうる重要性の高い情報であることを指摘した。被告人の動機については、派遣先での扱いへの不満を述べるものの、結局は利得目的であり酌量の余地は乏しいとした。また、同様の手口による個人情報売却を長期間繰り返していたことから犯行の悪質性は一層高く、本件で得た利益が5万円程度にとどまることを考慮しても罪責は重いと判断した。他方、交通前科以外に前科前歴がないこと、犯行を認めて反省の弁を述べていること、妻が公判廷で監督を誓っていることなどの事情を考慮し、懲役刑について執行猶予を付すのが相当とした。