不正競争等に対する損害賠償請求
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、空手道場「C」を経営する原告が、同じく空手道場「D」を経営する被告に対し、被告がFacebook上に行った投稿が原告の名誉権及び名誉感情を侵害するとともに、不正競争防止法2条1項21号(営業上の信用を害する虚偽事実の流布)に該当するとして、民法709条及び不競法4条に基づき損害賠償380万円を請求した事案である。 事件の発端は、平成29年12月、原告が道場での稽古中に門下生Eのスパーリング相手を務めた際、原告の上段回し蹴りがEの右頭部に当たる事故が発生したことにある。Eは損害賠償請求訴訟を提起したが、さいたま地裁はEの請求を棄却した。その後、Eの夫Fがこの判決結果についてFacebookに公開投稿したところ、被告がこれを引用し「この判決っておかしくないですか?道場内は治外法権という事でしょうか?」等のコメントを付して投稿した。さらに被告は、第三者のコメントに返信する形で「鬼畜道場主」「鬼畜の所業」「完全なる故意の傷害罪」等の表現を含む複数の投稿を行った。なお、いずれの投稿にも原告の実名は記載されていなかった。 【争点】 主な争点は、①匿名投稿における原告の同定可能性の有無、②名誉毀損の成否(真実性・相当性の抗弁を含む)、③不競法2条1項21号の不正競争該当性、④「鬼畜道場主」「鬼畜の所業」等の表現による名誉感情侵害の成否、⑤損害額であった。被告は、投稿に実名がなく対象者を同定できないこと、空手の流派が異なり競争関係にないこと、Eのブログ等から後遺症が残る大けがは真実であること等を主張して争った。 【判旨】 裁判所は、同定可能性について、原告と面識がある者やFの所属道場の道場主が原告であるとの知識を有する者を基準とすべきとし、被告のFacebookフォロワー515名の中にそのような者が多数存在したと認定して、同定可能性を肯定した。名誉毀損については、「後遺症が残るほどの大けがを負わせた」との摘示事実は、カルテに他覚的・客観的所見がなく別件判決でも傷害は重くなかったと認定されている以上、真実とは認められないとした。被告がEのブログを根拠に真実と信じたとの主張についても、一方当事者のブログの記載を軽信したにすぎず相当性を欠くと判断した。不正競争該当性については、流派や所在地が異なっても空手指導という役務提供で共通し競争関係にあるとして、虚偽事実の流布に当たると認めた。名誉感情侵害については、「鬼畜」という表現が社会通念上許容される限度を超えるとして侵害を認めた。損害額については、実名を挙げていないことや故意に虚偽事実を摘示したものではないこと等を考慮し、慰謝料5万円、無形損害10万円、名誉感情侵害10万円、弁護士費用3万円の合計28万円の限度で請求を認容した。