AI概要
【事案の概要】 本件は、「光フェルール及び光フェルール金型」と題する発明について特許出願をした原告(スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー)が、特許庁から拒絶査定を受け、さらに拒絶査定不服審判(不服2021-13694号)においても請求不成立の審決を受けたため、同審決の取消しを求めた審決取消訴訟である。 本願発明は、光通信に用いる光コネクタの光フェルールに関するものである。光フェルールは金型を用いて一体成型されるが、金型の二つの半体の合わせ目(パーティングライン)に起因して成型品上に「分割線加工物」と呼ばれる微小な段差やバリが生じる。本願発明は、この分割線加工物によって光フェルールの面を第1のセクションと第2のセクションに区分し、各セクションに光導波路の受け入れ要素、光作用要素、位置合わせ特徴を配置する構成としたものである。 特許庁の審決は、本願発明が引用発明(国際公開第2015/038941号に記載のコネクタ光結合ユニット)と同一であるか、少なくとも引用発明から容易に想到し得るものであるとして、特許法29条1項3号又は同条2項により特許を受けることができないと判断した。 【争点】 主な争点は、(1)引用発明における「分割線加工物」の有無に関する相違点の認定の当否、及び(2)本願発明の容易想到性の判断の当否である。原告は、引用発明は一体型構造を志向しており不要なマーキングや特徴を排除する意図があるから分割線加工物を備えていないことは明らかであると主張し、審決の相違点認定は誤りであると争った。 【判旨】 知的財産高等裁判所は、原告の請求を棄却した。 裁判所はまず、本願発明の「分割線加工物」について、金型の合わせ目に起因して成型品上に生じる段差状ライン又はバリ状ラインを意味するものと解した上で、特許請求の範囲にはその具体的な大きさ等の特定はないと判断した。また、原告が主張する「ユーザーが分割線加工物を感知することで製造方法を知ることができる」という効果は、本願明細書に記載されていない効果であるとして採用しなかった。 引用発明については、「成形で形成されることができる」との記載には金型による成形が当然に含まれ、金型による成形の際にはパーティングラインに分割線加工物が必然的に生じることは技術常識であると認定した。さらに、引用発明のコネクタ光結合ユニットの外形形状から、金型のパーティングラインの位置は必然的に決定され、その位置は本願発明の第1のセクションと第2のセクションを区分する位置と一致すると判断した。 加えて、光フェルールの分野では位置合わせに支障がない程度にバリを残すことは一般的に行われているから、引用発明に分割線加工物を排除する意図があるとは解釈できないとした。以上から、審決の相違点認定及び容易想到性の判断に誤りはないとして、本願発明は引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項により特許を受けることができないとした審決の結論を維持した。