公職選挙法違反被告事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 令和元年7月21日施行の参議院議員通常選挙(広島県選出)に際し、同選挙に立候補する決意を有していたAの選挙運動者である被告人が、Aを当選させる目的で、投票及び投票取りまとめなどの選挙運動をすることの報酬として供与されるものであることを知りながら、平成31年3月31日頃、自己の選挙事務所において、Aの配偶者であるBから現金30万円の供与を受けたとして、公職選挙法違反(被買収)で起訴された事案の控訴審である。被告人は現職の市議会議員であり、Bは現職の衆議院議員であった。本件は、国政選挙に関連する大規模な選挙買収事件の一環として位置づけられるものである。被告人は、当初検察官により不起訴処分(起訴猶予)とされたが、検察審査会が起訴相当の議決をしたことを受け、検察官が再捜査の上起訴に至ったという経緯がある。原審の広島地方裁判所は有罪と認定し、被告人がこれを不服として控訴した。 【争点】 第1の争点は、本件現金30万円の供与に選挙運動の報酬としての趣旨(買収の趣旨)が認められるか、また被告人にその認識があったかという事実誤認の有無である。弁護人は、Bの目的は県連会長職に就くための仲間づくりが主であり、被告人の市議選に対する陣中見舞いにすぎないと主張した。また、明示的な選挙応援依頼がない以上、買収の趣旨は認められないとも主張した。第2の争点は、本件起訴が公訴権を濫用した無効な公訴提起に当たるかという点である。弁護人は、捜査段階で違法な司法取引が行われ、それにより汚染された自白調書を踏まえて検察審査会の起訴相当議決がなされたものであるから、本件起訴には重大な違法があると主張した。 【判旨(量刑)】 広島高等裁判所は、控訴を棄却した。事実誤認の主張について、Aの本件選挙における情勢が楽観視できない状況の下、Aの当選に向けた活動に具体的に関わっていたBが、これまで名目の如何を問わず現金を渡したことのない被告人に対し、突如陣中見舞いと称して30万円もの現金を渡した事実関係等に照らせば、買収の趣旨を推認した原判決の判断に論理則・経験則等に照らし不合理なところはないとした。明示的な選挙応援依頼の言辞がなくても、経緯や情況等により買収の趣旨を認定することに妨げはないと判示した。公訴権濫用の主張についても、本件は30万円もの現金が供与された悪質な選挙買収事件であり、検察審査会の議決を受けて改めて起訴した検察官の公訴提起が、職務犯罪を構成するような極限的な場合に当たるとは到底認められないとして、これを退けた。