懲戒免職処分等取消請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 名古屋市の公立小学校で学校給食の調理員として約25年間勤務してきた原告が、調理場の専用冷凍庫に保存食として冷凍保存されていた油揚げ2袋、クロワッサン1個及びリンゴロールパン1個を自宅に持ち帰って食べる目的で自分の鞄に入れたところ、他の調理員の報告により発覚した。原告は鞄の中身を確認される前に自ら申告し、物品は調理場の外に持ち出されるには至らなかった。本件物品4点のうち3点は2週間の保存期間が経過しており、近い時期に廃棄される見込みのものであった。名古屋市教育委員会は、本件行為が公金物の窃取に該当するとして懲戒免職処分を行うとともに、退職手当約1149万円の全額を支給しない処分をした。原告はこれらの処分の取消しを求めて提訴した。なお、本件小学校では以前からトマトや牛乳などの給食物資の所在不明事案が発生しており、校長から調理員に対し、公金物の窃取は懲戒免職処分になる旨の注意喚起がされていた。 【争点】 1. 懲戒免職処分の裁量権の逸脱・濫用の有無 2. 退職手当全額不支給処分の裁量権の逸脱・濫用の有無 【判旨】 裁判所は、懲戒免職処分及び退職手当不支給処分のいずれも違法であるとして、両処分を取り消した。まず懲戒免職処分について、本件物品は油揚げ2袋とパン2個にすぎず財産的価値は少額であること、4点中3点は保存期間が経過し廃棄が見込まれていたこと、保存食が検査等に使用される必要が現実に生じていないことから、財産的損害は相当に軽微であるとした。学校給食の調理員による保存食窃取が衛生管理に対する信頼を損なう行為であることは認めつつも、一回的行為であり他に窃取の事実を認めるに足りる証拠もないことから、公務の信頼失墜の程度が重大とまではいえないと判断した。市教委の懲戒処分取扱方針では公金物の窃取は「免職」が標準例とされているが、個別事案により標準例以外の量定もあり得るとされていることを指摘し、窃取行為の結果が軽微である場合には免職以外の処分を選択することが想定されていると解釈した。原告に過去の懲戒処分歴がなく、非違行為後に謝罪・反省の態度を示していることも考慮し、免職は重きに失するとして裁量権の逸脱を認めた。退職手当不支給処分も、懲戒免職処分が違法である以上、その前提を欠くものとして違法と判断された。