AI概要
【事案の概要】 本件は、JASDAQ市場に上場していた子供服等の製造・販売会社(甲社)の取締役会長であった被告人が、甲社の筆頭株主であった会社の代表取締役A、甲社の代表取締役社長B、及び同社の株主C・Dと共謀の上、甲社の有価証券報告書に虚偽記載をして提出したという金融商品取引法違反の事案である。 具体的には、甲社の令和2年3月21日から令和3年3月20日までの連結会計年度において、実際には営業損失約6981万円、経常損失約8552万円、税金等調整前当期純損失約9563万円であったにもかかわらず、架空売上を計上する方法により、営業利益約6377万円、経常利益約5405万円、税金等調整前当期純利益約4395万円が生じているかのように装った虚偽の連結損益計算書を掲載した有価証券報告書を、令和3年6月17日に近畿財務局長に対して提出したものである。粉飾額は合計約1億3000万円に上った。 被告人は、有価証券報告書作成時は甲社の代表取締役社長、提出時は取締役会長として、同社の業務全般を統括する立場にあった。 【判旨(量刑)】 裁判所は、被告人を懲役2年(執行猶予4年)に処した(求刑:懲役2年)。 量刑の理由として、まず本件犯行の重大性を指摘した。営業損益・経常損益・税金等調整前当期純損益のいずれについても損失を利益に見せかけた粉飾であり、単年度の粉飾とはいえ、投資家による企業価値の判断を誤らせる危険が大きく、有価証券市場の公正性及び公平性への信頼を毀損し得るものと評価した。また、共犯者の知人らが経営に関与する複数の会社を架空売上の計上先とし、様々な名目を使い分けて実体のある取引を仮装するなど、その態様は巧妙で悪質であると認定した。 被告人の責任については、業務全般を統括する立場にあった以上、職責を全うしなければならなかったことは明らかであり、共犯者の積極的な働きかけにより本件に及んだ側面が否定できないことを考慮しても、刑事責任は軽くないとした。もっとも、被告人が公訴事実を認めて反省の態度を示していること、前科がないことなどを考慮し、刑の執行を猶予するのが相当と判断した。