AI概要
【事案の概要】 本件は、被告会社が主催する「アースハートセミナー」を受講した原告ら15名が、被告会社及びその元代表取締役である被告Pに対し、損害賠償を求めた事案である。被告会社は、「ハンドパワー」と称する、客観的な科学的・医学的裏付けを欠く能力を習得するためのセミナー(3か月間全12回、受講料70万円)を開講していた。被告会社は、会報誌やホームページ等で「ハンドパワーがどんな病気でも治せる力である」と宣伝し、医師の意見を通じて科学的根拠があるかのように装っていた。また、会員に対し、第三者を勧誘する行為を「覚醒」と称して推奨し、「病気を改善するには覚醒が必要」などと説明して新規会員の獲得を図っていた。原告らは、自身や家族の病気等に悩みを抱えていたところ、会員からの勧誘を受けてハンドパワーで悩みが解消できると錯誤に陥り、セミナー受講料等を支払った。なお、被告会社に対しては既に別の会員らが集団訴訟(前件訴訟)を提起し、被告会社らの敗訴が平成27年に最高裁で確定していた。 【争点】 主な争点は、(1)被告らの不法行為責任の有無、(2)損害の有無及び額、(3)消滅時効の成否である。特に消滅時効について、被告らは、前件訴訟の最高裁判決が出た平成27年11月頃、又は原告らがつくしの会を退会した時点で「損害及び加害者を知った」と主張し、本件訴訟提起時(令和3年9月)には既に3年の時効期間が経過していたと主張した。 【判旨】 裁判所は、被告会社の活動について、虚偽の内容を含む詐欺的な宣伝を行い、病気を改善したいという第三者の切実な思いに付け込んで新規会員を獲得する不当な勧誘を行わせ、セミナーの内容・経済的負担に照らして著しく均衡を欠く高額の受講料を取得するものであり、有機的に関連した一連のシステムとして社会的相当性を逸脱する違法なものと認定した。被告Pについても、資料作成やチケット販売・覚醒の推奨等を通じて主導的立場で関与したとして、不法行為責任を認めた。 消滅時効については、被告会社の活動の巧妙さに照らすと、退会時点や前件判決確定時点では、原告らが各活動の違法性を認識したとはいえないとし、令和3年4月以降に弁護士に相談した時点で初めて損害及び加害者を知ったと判断した。これにより時効は完成しておらず、原告らの請求を一部認容し、被告らに対し連帯して約25万円から約54万円の損害賠償の支払を命じた。