AI概要
【事案の概要】 被告人は、令和4年8月1日午前9時20分頃、札幌市内の道路を普通乗用自動車で走行中、下り勾配で減速しようとした際、ブレーキペダルと間違えてアクセルペダルを踏み込み、そのまま踏み続けて走行した。被告人の車両は時速約66キロメートルまで加速し、横断歩道上を自転車で横断中の被害者A(当時70歳)に衝突した(第1事故)。被告人はその後もアクセルペダルを踏み続け、時速約136キロメートルまで加速して対向車線に進出し、対向車両に正面衝突するなどの事故を起こした(第2事故)。第1事故から第2事故まで約1分15秒間、走行距離約1.6キロメートルにわたりアクセルペダルを踏み続けた結果、被害者Aは重症胸部外傷により死亡し、第2事故の相手方2名もそれぞれ約62日間及び約23日間の加療を要する傷害を負った。被告人は過失運転致死傷罪で起訴された。 【判旨(量刑)】 裁判所は、アクセルとブレーキの踏み間違いをしないことは自動車運転者にとって最も基本的な注意義務の一つであると指摘した。被告人は混乱・狼狽した状態にあったとは認められるものの、踏み間違いの時間が非常に長いこと、他の車両を避けるためのハンドル操作やパワースイッチ・シフトレバーの操作は行えていたことから、踏み間違いに気づくことが難しかったとはいえず、過失は重大であるとした。被害者らに落ち度はなく、1名の尊い命が失われ、時速約136キロメートルという高速度での第2事故は危険性が非常に高かったと評価した。被告人には平成20年に自動車運転過失傷害罪の前科があるが、その後は優良運転者免許証を有し慎重に運転していたことから、この点を犯情の悪質さとして捉えることはできないとした。もっとも、本件はペダル踏み間違い事故の中でも悪質であると位置付けた。他方、対人無制限の任意保険に加入し賠償の見込みがあること、罪を認め謝罪していること、今後運転しないことを約束していることなど被告人に有利な事情も考慮したが、犯情の悪質さから執行猶予は相当でないとして、求刑禁錮4年6月に対し、禁錮2年6月の実刑を言い渡した。