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【事案の概要】 被告人は、鹿児島県鹿屋市の自宅において、妻、養子3名及び実子であるA(以下「被害者」という。)と同居していた。被告人は、経済的に苦しい生活状況や妻との関係不良などからストレスを募らせていたところ、令和2年2月26日午後6時59分頃から同日午後8時45分頃までの間、一人で被害者の子守をしていた際に、被害者(当時生後53日)が泣き止まないことにいら立ち、日頃の生活等に関するうっぷんも相まって、突発的に被害者の前頭部を拳骨で1回殴打する暴行を加えた。これにより、被害者は頭蓋骨骨折、急性硬膜下血腫等の傷害を負い、翌27日午後6時17分頃、搬送先の病院において脳障害により死亡した。被告人は犯行直後から逮捕されるまでの間、被害者の死亡を当時3歳の養子のせいにしていた。 被告人は傷害致死罪で起訴され、鹿児島地方裁判所において審理された。検察官は懲役8年を求刑し、弁護人は懲役4年以下の科刑意見を述べた。 【判旨(量刑)】 裁判所は、被告人を懲役6年に処し、未決勾留日数中670日をその刑に算入した。量刑の理由として、まず犯行の危険性について、生後2か月にも満たない乳児に対する暴行であり、柔らかく骨折が生じにくい乳児の頭蓋骨に複数の骨折を生じさせたほど強いもので、一度きりの暴行とはいえ危険性が高い行為であったと評価した。その結果、尊い人命が失われるという極めて重大な結果が生じており、被害者の母親や祖母が厳しい処罰を望むのも至極当然であるとした。犯行の背景として、被告人が経済的困窮、妻との関係不良、妻が連れ子らを前夫の両親に定期的に会わせていたことなどにストレスを募らせていた事情を認定しつつも、その根底には妻とのコミュニケーション不足や思い込みなど被告人自身の未熟さがあり、犯行の一因に過ぎないとして、量刑上大きく酌むことはできないとした。また、被告人は悔恨の情を示しているものの、犯行直後から養子に責任を転嫁しており、自身の犯した罪に真摯に向き合っていたとはいいがたいと指摘した。以上を踏まえ、同種事案の量刑傾向に照らし、懲役6年が相当であると判断した。