AI概要
【事案の概要】 本件は、強盗殺人等の罪により死刑が確定し、福岡拘置所に収容されている原告が、3名の養親子(A、S、E)及び3名の知人(刺青の彫師G・H、フリーライターI)に対する信書の発信を福岡拘置所長から不許可とされたことについて、被告(国)に対し、①養親子3名との間で刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(刑事収容施設法)139条1項1号により信書を発受できる地位の確認と、②国家賠償法1条1項に基づく慰謝料等148万5000円の支払を求めた事案である。原告は、暴力団組長の子として育ち、20歳で強盗殺人等の罪を犯して死刑判決を受けた。原告は幼少期から刺青の下絵を描いており、身柄拘束後も制作を続け、死刑囚表現展で受賞するなどしていた。養親子3名はいずれも刑事施設入所歴のある者で、原告とは在社会時の交流はなく、刺青を通じた交流の中で養子縁組に至った。福岡拘置所長は、これらの養子縁組が外部交通確保の目的でなされたものであり「親族」に該当しないとして、信書の発受を不許可とした。知人3名についても、心情の安定に資する信書等に該当しないとして不許可とした。 【争点】 主な争点は、①確認の訴えの利益の有無、②原告が養親子3名との間で刑事収容施設法139条1項1号の「親族」として信書を発受できる地位にあるか、③各不許可処分の国家賠償法上の違法性の有無である。特に②について、外部交通確保を目的とした養子縁組が民法802条1号の「縁組をする意思がないとき」に当たり無効となるか、また法務省矯正局長通達(本件通達)に基づき「親族」から除外できるかが中心的に争われた。 【判旨】 裁判所は、確認の利益を肯定した上で、養親子3名について原告の「親族」該当性を認めた。その理由として、刑事収容施設法139条1項1号の「親族」は民法725条の「親族」と同義であり、有効な養子縁組がなされれば親族に当たるとした。原告が父母宛ての信書で「外部交通のため」と記載していた事実はあるものの、原告の生育環境の特殊性や、養親子との間で刺青の下絵の指導等を通じて真摯な交流を深めていた実態に照らせば、外部交通を動機とすることと縁組意思は併存し得るとして、養子縁組の無効は認められないと判断した。本件通達の定めについては、養子縁組が無効でない場合に外部交通が権利濫用に当たる場合を示したものと解釈したが、本件では権利濫用にも当たらないとした。他方、国家賠償請求については、養親子宛て・知人宛ていずれの不許可処分についても、当時の裁判例の状況や原告自身の虚偽申告等の事情から、福岡拘置所長が職務上通常尽くすべき注意義務を怠ったとはいえないとして、全て棄却した。結論として、確認請求は認容し、国家賠償請求は棄却した。