AI概要
【事案の概要】 被告人は、10年以上前から糖尿病にり患し、インスリン注射による治療を受けていた。医師等からは、インスリン注射後に血糖値が低下して意識を失うなどの低血糖症状を防ぐため、注射後に食物等を摂取する必要があることを繰り返し指導されていた。にもかかわらず、被告人は定期的な通院や治療の継続を怠り、自己判断による投薬等を行って糖尿病が悪化し入院することを3度繰り返していた。さらに、本件前日にも、通勤前にインスリンを注射した後、食物等を摂取せずに運転を開始し、注意力が散漫となって事故を起こしていた。 それにもかかわらず、被告人は、令和6年5月16日午前8時14分頃、自己の身体にインスリンを注射した後、食物等を摂取しないまま普通貨物自動車の運転を開始した。その結果、間もなく低血糖症状による意識障害に陥り、意識が低下した状態のまま時速約40キロメートルで走行中、押しボタン式信号機が設けられた横断歩道上を青信号に従い横断していた被害者(当時9歳)に自車を衝突させて路上に転倒させ、外傷性肝損傷による腹腔内出血により死亡させた。 【判旨(量刑)】 裁判所は、被告人を禁錮2年6月の実刑に処した(求刑禁錮4年、弁護人は執行猶予付き判決を求めていた)。 量刑判断において、裁判所は、本件の過失が非常に重大であると評価した。被告人は、インスリン注射後に食物等を摂取せずに運転すれば低血糖症状により意識障害に陥る危険があることが明白であったにもかかわらず、その危険を軽視して運転を敢行しており、身勝手な犯行であると指摘した。特に、前日にも同様の原因で事故を起こしていたことから、低血糖症状による事故の可能性は十分に想起されたと認定した。 結果の重大性についても、何ら落ち度のない9歳の被害者が将来を奪われたことの無念さは察するに余りあり、遺族が厳しい処罰感情を抱くのは当然であるとした。 他方、被告人に有利な事情として、被告人が自身の軽率な判断や糖尿病治療のあり方を振り返り今後運転しない意向を示していること、対人賠償無制限の任意保険により相応の賠償が期待されること、前科前歴がないことを考慮したが、過失の重大さと結果の深刻さに照らし、実刑はやむを得ないと判断した。