AI概要
【事案の概要】 原告(エスエスシー出版有限会社)は、「Jimny Fan」「ジムニーファン」の文字を2段に書してなる商標について、第16類「オフロード車の改造に用いる部品及び附属品に関する情報雑誌」を指定商品として商標登録出願をしたところ、特許庁から、スズキ株式会社が商標権を有する引用商標(「Jimny」「ジムニー」等)と類似し商標法4条1項11号に該当する、仮に同号に該当しないとしても同項15号(混同を生ずるおそれ)に該当するとして拒絶査定を受けた。原告は拒絶査定不服審判を請求したが、審判でも同様の理由で請求不成立の審決がされたため、その取消しを求めて知的財産高等裁判所に出訴した。原告は平成24年以降「Jimny Fan」という題名の情報雑誌を継続的に発行しており、スズキ社もこれを知りながらクレームを述べたことはなく、むしろ広告料を支払って本件雑誌にジムニーの広告を掲載するなど発行を援助していた。 【争点】 (1) 本願商標と引用商標の類否(商標法4条1項11号該当性)。具体的には、結合商標である本願商標から「Jimny」「ジムニー」の部分を要部として抽出し、引用商標と比較することが許されるか。 (2) 本願商標に係る「混同を生ずるおそれ」の有無(商標法4条1項15号該当性)。本願補正商品の取引の実情に照らし、スズキ社の業務との混同が生じるおそれがあるか。 【判旨】 裁判所は審決を取り消した。11号該当性について、本願商標は外観上「Jimny」と「Fan」が同じ書体・大きさで一体的に構成されており、片仮名部分も空白なく続けて記載されていることから、分離観察の根拠はないとした。結合商標の要部抽出が許されるのは「出所識別標識として強く支配的な印象を与える場合」であるところ、本願補正商品が「オフロード車の改造に用いる部品及び附属品に関する情報雑誌」という極めてニッチな商品であり、スズキ社を含む自動車メーカーがこのような情報雑誌を発行している事実はなく、取引者・需要者がスズキ社等を発行主体と認識するとは考え難いことから、「Jimny」部分が出所識別標識として強く支配的な印象を与えるとはいえず、要部として抽出することは許されないと判断した。全体観察によれば、本願商標と引用商標は称呼・観念・外観のいずれも異なり、類似しない。15号該当性についても、ジムニーの改造に関する情報雑誌はスズキ社とは無関係の第三者により多数発刊されており、スズキ社との間で「棲み分け」が成立していること等から、混同を生ずるおそれは認められないとした。取引の実情を重視し、職権で原告代表者尋問を採用した上での判断である点が注目される。