発信者情報開示命令申立ての認容決定に対する異議事件
判決データ
- 事件番号
- 令和5ワ70645
- 事件名
- 発信者情報開示命令申立ての認容決定に対する異議事件
- 裁判所
- 東京地方裁判所
- 裁判年月日
- 2024年8月8日
- 裁判官
- 杉浦正樹、石井奈
AI概要
【事案の概要】 本件は、アダルトビデオの制作・販売を業とする被告(有限会社プレステージ)が、氏名不詳の発信者らがファイル共有ネットワークBitTorrentを使用して被告の動画に係る著作権(公衆送信権)を侵害したことが明らかであるとして、電気通信事業者である原告(株式会社朝日ネット)に対し、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(プロバイダ責任制限法)5条1項に基づき、発信者情報の開示を求めた事案である。 東京地方裁判所は令和5年9月28日に被告の申立てを認容する開示命令決定を行ったが、これに対し原告が異議の訴えを提起した。被告は当審において、発信者情報の任意開示を受けた部分を除いた情報の開示を求めた。 BitTorrentとは、P2P形式のファイル共有ネットワークであり、ファイルを小さなデータ(ピース)に細分化し、ネットワーク上のユーザー(ピア)間で共有する仕組みである。被告は調査会社に委託し、BitTorrent監視用ソフトウェアを用いて、本件動画のピースをアップロードしていた発信者のIPアドレス等を特定する調査を実施した。 【争点】 主な争点は権利侵害の明白性である。原告は、①調査会社が本件動画と侵害動画(BitTorrentからダウンロードした動画ファイル)の比較を行っておらず、両者はBitTorrent利用による余計な通信情報の混在により異なる可能性があること、②一部の発信者が被告主張の時刻にパソコンを使用していなかった旨述べていること、③被告の当初申立てに原告が割り当てたものではないIPアドレスが含まれていたことなどから、調査の正確性に疑問がある旨主張した。 【判旨】 裁判所は、BitTorrentの仕組み及び調査の方法・内容を踏まえ、発信者らがBitTorrentをインストールして本件動画のピースをダウンロードするとともに、不特定の者からの求めに応じてBitTorrentネットワークを介して自動的に送信し得る状態にし、調査会社の求めに応じて自動的にピースをアップロードしたと認定した。 原告の主張については、侵害動画は本件動画のモザイク処理部分への加工がうかがわれるものの、本件動画を複製して作成されたものとみられるため、両者の比較を行っていないことは結論を左右しないとした。調査ソフトウェアについても、一般的なクライアントソフトの機能を用いてIPアドレス等を受信しており、通常のBitTorrent利用と異ならないこと、独自関数による記録部分についても正確性につき相応に合理的な説明ができていることから、調査の信用性に欠けるところはないと判断した。 以上から、被告の著作権(公衆送信権)侵害は明らかであり、被告には発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとして、原決定を変更し、被告の開示請求を認容した。