投稿削除及び損害賠償の請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、クラウドソーシングサイト「ランサーズ」上で、控訴人(発注者・IT企業)が被控訴人(受注者・エンジニア)に対して行った投稿(口コミ)について、被控訴人が、当該投稿が不正競争防止法2条1項20号・21号の不正競争に該当し、又は不法行為に該当するとして、投稿の削除及び損害賠償金100万円の支払を求めた事案の控訴審である。 控訴人は被控訴人に「クラウドネットワークアナライザーのシステム開発」業務及びサイネージ案件を発注したが、アナライザー案件では、被控訴人が自ら課題管理表でhttps通信の検知に関する技術的懸念を指摘しておきながら、控訴人担当者がその指摘の趣旨を確認する質問を重ねても「仕様書を評価する立場にない」として繰り返し回答を拒否するなどのやり取りがあった。また、サイネージ案件では、控訴人が38万円を支払ったにもかかわらず十分な成果物が得られず、改修には約41万円の追加見積りが提示されたため、結局別業者に依頼して完成させた。控訴人はこれらの経緯を踏まえてランサーズに投稿を行った。原審は、投稿の一部が不競法2条1項21号の不正競争に該当するとして、削除請求及び損害賠償50万円を認容したため、控訴人が控訴した。 【争点】 1. 本件投稿が不競法2条1項21号の不正競争(虚偽事実の告知・流布による信用毀損)に該当するか 2. 本件投稿が不競法2条1項20号の不正競争(品質誤認惹起)に該当するか 3. 本件投稿が不法行為に該当するか 【判旨】 控訴認容(原判決取消し、被控訴人の請求をいずれも棄却)。 争点1につき、控訴審は、投稿中の「なんで答える必要あるの?」という表現について、被控訴人が字句どおりの発言をした事実は認められないとしつつも、ランサーズ閲覧者の普通の注意と読み方を基準とすれば、当該投稿は「何度やり取りしても質問に明確に回答しない」「相手方の権限を確認した」「合理的な理由を示さず回答を拒否した」という各事実を摘示するものと認定した。そして、実際のSlack上のやり取りに照らせば、被控訴人は自ら指摘した技術的懸念について、担当者が立場に配慮した質問を幾度も重ねたにもかかわらず回答を拒否し続けていたと認められ、摘示された事実は虚偽とはいえないと判断した。 争点2につき、投稿内容によって控訴人の役務の質が誤認されるとは認められないとした。 争点3の不法行為についても、投稿が被控訴人の社会的評価を低下させるものではあるが、マッチングサイトにおける投稿は公共の利害に関し目的の公益性も認められること、摘示された事実は重要な部分について真実であること、「守銭奴ビジネス」との表現にやや穏当を欠く点はあるものの意見・論評の域を逸脱するものではないことから、不法行為は成立しないとした。