AI概要
【事案の概要】 東大阪市立中学校で理科担当教師として勤務していた原告が、校長の注意義務違反により長時間労働を余儀なくされ、適応障害及びうつ病を発症したとして、学校設置者である被告東大阪市に対しては国家賠償法1条1項に基づき、校長の給与負担者である被告大阪府に対しては同法3条1項に基づき、連帯して330万円(慰謝料300万円及び弁護士費用30万円)の損害賠償を求めた事案である。原告は令和3年度、週20コマの理科の授業(前年度比4コマ増)に加え、中学3年生の学年主任、進路指導主事、学力向上委員、野球部主顧問を担当していた。学習指導要領改訂に伴う新教材作成の負担増もあった。発症直前6か月間の時間外勤務は月85時間から165時間に及び、公務災害認定基準(発症直前2か月間で月120時間以上)を大きく上回っていた。原告は令和3年9月下旬頃と11月1日の2度にわたり校長に業務軽減を申し入れたが、校長は「代わりはいないので踏ん張ってほしい」「保護者説明会まで業務を継続してほしい」と回答し、具体的な軽減措置を講じなかった。 【争点】 主な争点は、①校長が原告の過重な勤務時間及び勤務内容を軽減することを怠ったとして国家賠償法上の注意義務違反が認められるか、②損害の発生及び額、③原告が産業医面談を受けなかったことについて過失相殺が認められるかの3点であった。被告東大阪市は、校長が進路指導の協力体制を構築し資料作成を他の教師に割り振るなどの対策を行ったと主張したほか、原告が産業医面談を受けなかった点につき1割の過失相殺を主張した。 【判旨】 裁判所は、校長は教師に疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して心身の健康を損なうことがないように権限を行使すべき注意義務を負うとした上で、原告の公務は量的にも質的にも著しく過重であったと認定した。校長は勤務時間管理簿等から原告の勤務状況を認識でき、令和3年9月下旬には原告から直接業務軽減の要望を受けていたにもかかわらず、具体的な軽減措置を執らず従来どおりの公務続行を指示したことは注意義務違反に当たると判断した。被告東大阪市が主張した対策についても、10月の時間外勤務が136時間を超えた事実に照らし不十分であるとした。過失相殺については、原告が産業医面談を受ける具体的契機がなかったこと、校長に自覚症状を伝えても公務続行を命じられた経緯に鑑み、原告に過失があったとはいえないとして排斥した。以上から、慰謝料200万円及び弁護士費用20万円の合計220万円並びに遅延損害金の連帯支払を命じた。