不正競争行為差止請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、「交通誘導員ヨレヨレ日記」「派遣添乗員ヘトヘト日記」等の職業日記シリーズ(累計17種類)を出版する控訴人(株式会社三五館シンシャ)が、被控訴人(株式会社ワック)の出版する書籍について、控訴人書籍の表紙デザイン(題号の形式、白色基調の表紙、手書き風イラスト、自虐的コメントの配置等の組合せ)が不正競争防止法2条1項1号にいう周知の商品等表示に該当し、被控訴人書籍はこれと類似する表示を使用して混同を生じさせているとして、被控訴人書籍の製造・販売等の差止め、廃棄及び損害賠償を求めた事案の控訴審である。控訴人書籍は、特定の職業に従事する労働者の苦労や喜びをユーモアを交えて描いた職業日記風エッセイのシリーズであり、題号には「特定の職業・オノマトペの繰返し・日記」という統一的な形式が用いられ、表紙には哀愁を帯びた手書き風イラストや自虐的コメントが配置されるなど、シリーズ全体で高い統一感を有していた。控訴人は当審において商品等表示の内容をさらに具体化するとともに、予備的に不法行為(民法709条)に基づく請求を追加した。原審(東京地裁)は控訴人の請求をいずれも棄却していた。 【争点】 主な争点は、(1)控訴人書籍の表紙デザイン等の組合せが不正競争防止法上の「商品等表示」に該当するか、(2)当該表示の周知性が認められるか、(3)控訴人表示と被控訴人書籍との類似性が認められるか、(4)予備的請求である不法行為の成否である。控訴人は1万人規模のアンケート調査で認知度12.7%に達することや、累計販売実績約55万部、テレビ番組での紹介実績等を根拠に周知性を主張した。被控訴人は、アンケートの信用性や、書籍を「見たことがある」ことと商品等表示の周知性は別問題であること、表示を具体化するほど被控訴人書籍との相違が明らかになること等を反論した。 【判旨】 知財高裁は控訴を棄却し、当審で追加した予備的請求も棄却した。まず商品等表示該当性について、控訴人が主張する題号やコメント等の要素は書籍の形態とは言い難く、「特定の職業・オノマトペの繰返し」という題号形式や「哀愁のある表情」「悲哀とユーモアを交えたコメント」といった内容は抽象的な思想・感情の表現を含むものであり、商品の出所を示す自他識別機能を果たすものとはいえないと判断した。また、控訴人書籍の題号に含まれる「テゲテゲ」「もしもし」「ぎりぎり」等は必ずしもオノマトペとはいえないと指摘した。周知性についても、販売実績を裏付ける客観的証拠がなく、アンケート調査も当審控訴人表示と同一の表示について質問したものではない上、表示の主体が控訴人であることについての質問・回答もないとして、周知性を否定した。類似性についても、被控訴人書籍の題号は茶色の活字体であり手書き風ではないこと、イラストの人物は笑顔で哀愁が強調されていないこと等、当審控訴人表示の要素の多くにおいて相違するとした。予備的請求の不法行為についても、被控訴人書籍が控訴人書籍を模倣したとは認められず、出所の混同を招く事実も認められないとして、不法行為の成立を否定した。