閲覧等の制限申立却下決定に対する即時抗告申立事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、特許権侵害を理由とする損害賠償請求訴訟(基本事件)において、口外禁止条項を含む訴訟上の和解が成立した後、被告(抗告人・株式会社カケハシ)が、和解条項の全部について民事訴訟法92条1項2号に基づく閲覧等の制限を申し立てた事案である。原審(東京地方裁判所)は、和解条項の一部(被告システム目録等に関する部分)についてのみ閲覧等制限を認容し、その余を却下したため、抗告人が却下部分を不服として即時抗告した。 【争点】 口外禁止条項を含む訴訟上の和解条項の全部が、不正競争防止法2条6項にいう「営業秘密」に該当し、閲覧等制限の対象となるか。基本事件原告は、訴訟記録は裁判公開原則の下で本来公開されるべきものであり、一当事者が恣意的にアクセス制限をかけても営業秘密性は獲得できないと主張した。 【判旨】 知的財産高等裁判所は、原決定を変更し、和解条項の全部について閲覧等制限を認めた。まず営業秘密の3要件について、①秘密管理性につき、抗告人が和解条項全部を秘密管理規程に基づき代表取締役等の限られた者のみがアクセスできるよう一体的に管理している事実を認定した。②有用性につき、特許訴訟の和解条項はいかなる相手といかなる条件で合意するかという事業方針に関わる情報であり、知財戦略やレピュテーションリスクへの影響も考慮すると、和解条項全体が事業活動に有用な営業上の情報に当たるとした。③非公知性につき、口外禁止条項が設けられ、和解成立から約1か月後に閲覧等制限が申し立てられており、その間に第三者による閲覧がされた事実も認められないことから、非公知性を肯定した。さらに、裁判公開原則との関係について、憲法82条1項が公開を求める「対審」「判決」と異なり、和解は非公開の弁論準備手続で行われた自律的解決であること、処分権主義の下で当事者が口外禁止条項を合意した趣旨を尊重すべきであることを指摘し、和解条項全部の閲覧等制限は裁判公開原則と何ら抵触しないと判示した。