被爆者健康手帳交付等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 長崎市又はその近隣の長崎県内の市に居住する原告ら44名が、昭和20年8月9日の長崎原爆投下当時、爆心地から半径12km以内に居住等していたとして、被爆者援護法1条3号の「身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあった者」に該当すると主張し、長崎市長又は長崎県知事に対し、被爆者健康手帳の交付申請却下処分の取消し及び同手帳交付の義務付け等を求めた事案である。原告らの被爆地点は、いずれも被爆者援護法上の被爆地域及び第一種健康診断特例区域の外にあるが、第二種健康診断特例区域内にあった。いわゆる「被爆体験者訴訟」の第三次訴訟に当たる。 【争点】 (1) 被相続人の死亡による第一種健康診断受診者証に係る訴訟の承継の成否 (2) 被爆者援護法1条3号の「身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあった者」の意義 (3) 長崎原爆由来の放射性降下物の降下の有無及び降下範囲 (4) 原告らが同条3号に該当するか (5) 第一種健康診断受診者証交付申請却下処分の適法性 【判旨】 一部認容、一部却下、一部棄却。裁判所は、被爆者援護法1条3号の意義について、「原爆の放射線による健康被害の可能性がある事情の下にあった者」をいうと解し、その判断は最新の科学的知見に基づくべきとした。そのうえで、爆心地東方の東長崎地区については、マンハッタン報告書の測定データ、長崎原爆由来のプルトニウムの検出結果、及び一部地域での「黒い雨」の降雨事実等から、長崎原爆由来の放射性降下物が降下した相当程度の蓋然性が認められると判断した。さらに、広島高裁令和3年判決を受けて発出された令和4年基準(広島の「黒い雨」被爆者を救済する基準)との対比において、東長崎地区は広島の「黒い雨」降雨域と本質的に同じ事情にあるにもかかわらず、長崎の被爆者のみを令和4年基準の対象外とすることに合理的理由はなく、却下処分は裁量権の逸脱又は濫用に当たるとして、被爆地点が東長崎地区にあり所定の疾病を発症した原告ら15名について処分を取り消し、被爆者健康手帳の交付を命じた。他方、東長崎地区以外の原告らについては、放射性降下物の降下の蓋然性が認められないとして請求を棄却した。