葬祭料不支給決定処分取消請求控訴事件
判決データ
- 事件番号
- 令和5行コ46
- 事件名
- 葬祭料不支給決定処分取消請求控訴事件
- 裁判所
- 名古屋高等裁判所
- 裁判年月日
- 2024年9月12日
- 裁判官
- 長谷川恭弘、上杉英司、寺本明広
- 原審裁判所
- 名古屋地方裁判所
AI概要
【事案の概要】 東濃信用金庫の職員であったAの父(控訴人)が、Aは業務上の過大なノルマや上司によるパワーハラスメント等により精神障害を発病して自殺したとして、労災保険法に基づく葬祭料の支給を請求したところ、瀬戸労働基準監督署長が精神障害の発病が認められないとして不支給処分をしたため、その取消しを求めた事案である。原審(名古屋地裁)は、業務による心理的負荷が精神障害を発病させる程度とはいえないとして請求を棄却したため、控訴人が控訴した。 【争点】 ①Aが精神障害を発病していたか、②精神障害の発病及び自殺に業務起因性が認められるか。 【判旨】 控訴認容(原判決取消し、不支給処分取消し)。裁判所は、原審と異なり、Aの精神障害の発病及び自殺の業務起因性を認めた。 Aは、B支店長から「案件取らぬ者は給料泥棒」と罵倒され胸倉を掴まれる、「横領」と犯罪行為を示唆する言葉で繰り返し叱責される等のパワーハラスメントを日常的に受けていた。自爆営業(親族名義の不要なクレジットカード契約等)を余儀なくされるほどの達成困難なノルマが課され、休日もローラー活動やB支店長のゴルフ送迎をさせられていた。残業が認められない中で営業目標の達成と丁寧な事務処理の両立を求められる二律背反の状況に追い込まれ、昼食時間を犠牲にして事務処理を行えば「人事考課を下げる」と脅されるなど、逃げ場のない状態であった。 平成29年5月17日には、B支店長自身の指示に起因する住宅ローン案件の失敗について、責任をAに押し付ける激烈な叱責が行われ、同月23日にも「横領」との叱責が繰り返された。Aは当日帰宅後「会社に行きたくない」と述べ、ヘリウムによる自殺を試みて失敗した後、翌24日に自殺した。 裁判所は、Aが自殺の1か月前頃から抑うつ気分、食欲低下、不眠、自己評価の著しい低下等の症状を呈し、重症うつ病エピソード(妄想型うつ病)を発病していたと認定した。心理的負荷の総合評価として、日常的な指導・叱責が「強」、自殺直前の2回の叱責がそれぞれ単独で「強」に該当し、全体として「強」であることは明らかであるとして、業務起因性を肯定し、不支給処分を違法として取り消した。