AI概要
【事案の概要】 本件は、「浮力式動力発生装置」に関する特許出願(特願2018-202374号)の拒絶査定に対する不服審判請求を不成立とした審決の取消訴訟である。原告は、液体を入れた容器中に柱状の浮体を浮かべ、容器の貯液部に物体を挿入・抜去することで液位を増減させ、浮体を上下運動させる装置を発明したと主張した。本願発明の核心は、「極少流体の方法」(浮体側面と容器内壁の間隔を狭小にして駆動動力を最小化する方法)、「浮体の鉛直拡大の方法」(浮体の底面積を固定し高さを拡大して浮力を増大させる方法)、及び「物体の挿入と抜去の方法」の3つを組み合わせることで、浮体の上下運動が発する「発生動力」が装置を駆動する「駆動動力」を上回る関係(発生動力>駆動動力)を成立させるというものであった。特許庁は、実施可能要件(特許法36条4項1号)違反及び発明該当性(同法29条1項柱書)の欠如を理由に審判請求を不成立とした。 【争点】 (1) 実施可能要件についての判断の誤りの有無(浮体を動かすための仕事がゼロであるとした審決の判断は正当か) (2) 発明該当性についての判断の誤りの有無(本願発明はエネルギー保存則に反し自然法則に反するものか) 【判旨】 知財高裁は、原告の請求を棄却した。 実施可能要件について、裁判所は、本願明細書に記載された3つの例(浮体体積1・2・100立方メートルの各場合)では、注入した水の量は一定とされているものの、どのように水を注入するのか、水の注入に要した駆動動力の大きさや、それが3つの例において一定であるかについて明細書に記載も示唆もないと指摘した。さらに、図2の場合に浮体が浮くことが可能な程度の十分な浮力が生じているかも明らかでないとして、当業者が「発生動力>駆動動力」の関係が成立する動力発生装置を製造できると理解することはできないと判断した。なお、裁判所は、審決が「浮体を動かすための仕事はゼロ」としたことについて、装置の下端水平面を基準とすれば浮体の位置エネルギーは増加するといえるし、浮体を動かすには物体挿入のための動力が必要であるから、原告の主張は理解できるところであるとしつつも、そうであっても明細書の記載から実施可能要件を満たすとはいえないと結論づけた。また、原告が提出した実験動画(甲6)についても、発生動力の計算において浮体側の浮力を考慮していない点で失当であるとして排斥した。 発明該当性について、裁判所は、本願発明は入力エネルギーより大きなエネルギーを出力するものであり、エネルギー保存の法則に反し自然法則に反するものであって、特許法29条1項柱書の「産業上利用することができる発明」に該当しないとした審決の判断に誤りはないとした。