AI概要
【事案の概要】 本件は、照明機器メーカーである被告の元従業員である原告が、在職中にした職務発明(複数色のLEDを用いた光照射装置において、順方向電圧が異なるLEDの配置総数を同じにしながら直列個数と並列回路数を工夫し、基板の大きさや設置位置を共通化する発明)について、特許を受ける権利を被告に承継させた相当対価の未払分360万円及び遅延損害金の支払を求めた事案である。原告は退職後、被告との間で知的財産に関する合意書を取り交わし、30万円の支払をもって一切の請求権が消滅する旨合意していたが、被告が合意の約4か月後に他社に対し本件特許権侵害訴訟を提起し一部勝訴したことから、合意締結時の被告の特許評価が虚偽であったとして、詐欺取消し、錯誤無効又は消費者契約法に基づく取消しを主張した。 【争点】 (1) 本件合意の有効性(詐欺取消し又は錯誤無効の成否、消費者契約法に基づく取消しの成否) (2) 相当の対価の額 【判旨】 請求棄却。裁判所は、本件合意は有効であり、原告の相当対価請求権は30万円の支払により消滅しているとした。 詐欺取消し・錯誤無効について、被告が原告に示した評価書は、本件特許の請求範囲に出願前から実施されていた公知技術が含まれるため無効理由があり、有効な権利範囲を実施例レベルに限定すると他社による回避が容易であるとの内容であったが、本件特許が全て無効であるとか牽制効果が一切ないとは記載されていなかった。被告がレイマックに警告書を送付したのは合意後の平成29年6月であり、合意時点で侵害品の存在を認識していたとは認められないこと、別件訴訟でも訂正前の特許に新規性欠如の見解が示されたことなどから、評価書の内容が虚偽とは認められず、欺罔行為・欺罔の意図も認められないとした。また、原告は評価書の内容を理解し、被告の提案を受けない選択肢がある中で自ら再交渉を申し出て30万円での合意を受け入れたものであり、錯誤も認められないとした。消費者契約法についても、不実告知や断定的判断の提供には当たらないとした。