AI概要
【事案の概要】 原告らは、いずれも未成年の子の親であり、婚姻中に配偶者がその同意を得ずに子を連れて別居したため、子及び配偶者と別居を余儀なくされている者である。原告らは、国会が婚姻中の一方親による他方親の同意を得ない子の連れ去りを防ぐための立法措置(刑事法・民事法・親権行使に係る手続規定の整備)を正当な理由なく長期にわたって怠っていること(本件立法不作為)により、親権、監護権、教育権、リプロダクティブ権及び面会交流権が不当に制約され精神的苦痛を受けたと主張し、被告(国)に対し、国家賠償法1条1項に基づき、各11万円の慰謝料等の支払を求めた。 【争点】 主な争点は、①子の連れ去りを防ぐ法規制に係る国会の立法不作為が国賠法1条1項の適用上違法といえるか、②原告らの損害の有無である。原告らは、諸外国の法制度、ハーグ条約、児童の権利条約、自由権規約、子どもの権利委員会の勧告及び欧州議会決議等を根拠に、本件立法不作為が憲法13条、14条1項、24条に明白に違反すると主張した。被告は、未成年者拐取罪や不法行為法理等により子の連れ去りを防ぐ法規制は存在し、原告らの主張する権利は憲法上保障されておらず、立法不作為に違憲の明白性はないと反論した。 【判旨】 請求棄却。裁判所は、まず本件立法不作為の存在を認め、日本には他方親の同意のない子の連れ去りを手段を問わず処罰する刑事法、これを違法とする民事法の明文規定、及び親権行使に係る父母の意見不一致の場合の手続規定がいずれも存在しないと判断した。しかし、親権については、子の利益のために行使されるべき義務としての性質を有し、行使しない自由が許容されていない点で他の基本的人権と性質を異にするとして、憲法上保障された基本的人権とは解されないとした。リプロダクティブ権は出産と子の連れ去りとの関連性が乏しく、面会交流権も親権と実質的に重なるとして、いずれも憲法上保障されるとはいえないか、本件立法不作為による制約が認められないとした。さらに、仮に権利制約があるとしても、条約の規定や国際機関の勧告は抽象的なものにとどまり、裁判実務上も別居後の監護継続性を偏重する運用は採られておらず、法規制の必要性について国民の共通認識が形成されているとはいい難いことから、本件立法不作為が憲法に違反することが明白であるとはいえないと結論付けた。