AI概要
【事案の概要】 原告(リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド)が、被告(アムジエン・インコーポレーテツド)の有する「プロタンパク質コンベルターゼスブチリシンケクシン9型(PCSK9)に対する抗原結合タンパク質」に関する特許(特許第5705288号)について特許無効審判を請求したところ、特許庁が請求不成立の審決をしたため、原告がその取消しを求めた事案である。本件特許の請求項1は、PCSK9とLDLRタンパク質の結合を中和でき、PCSK9との結合に関して参照抗体(21B12抗体)と競合する単離されたモノクローナル抗体を対象とするものである。 【争点】 主な争点は、(1)サポート要件違反の有無(取消事由2)、(2)進歩性の判断の誤り(取消事由1)、(3)実施可能要件違反の判断の誤り(取消事由3)、(4)明確性要件違反の判断の誤り(取消事由4)、(5)発明該当性要件違反の判断の誤り(取消事由5)である。 【判旨】 知的財産高等裁判所は、取消事由2(サポート要件違反)に理由があるとして、審決を取り消した。裁判所は、本件発明の技術的意義は、21B12抗体と競合する抗体であれば同抗体と同様のメカニズムにより結合中和抗体としての機能的特性を有することを特定した点にあると判示した。しかし、「PCSK9との結合に関して21B12抗体と競合する」抗体には、参照抗体が結合する部位と同一又は重複する部位に結合する抗体のみならず、立体的妨害が生じる位置に結合する様式で競合する抗体も含まれるところ、後者がPCSK9とLDLRの結合を中和するメカニズムについて明細書には何ら開示がないと指摘した。また、原告側の実証実験により、21B12抗体と競合する抗体の約80%が結合中和性を有しないことが示されており、この実験結果は信頼性を有すると認定した。以上から、21B12抗体と競合する抗体であれば結合中和抗体としての機能的特性を有するとは認められず、本件発明はサポート要件に適合しないと結論付けた。