損害賠償請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 統合失調症の治療のため、上告人(香川県)の設置する香川県立丸亀病院に任意入院していた患者が、単独での院内外出を許可されていたところ、看護師に敷地内の散歩を希望する旨を告げて病棟から外出し、そのまま病院敷地外に出て付近の建物から飛び降りて自殺した。患者の相続人である被上告人が、上告人には、病院において無断離院の防止策が十分に講じられていないことを患者に対して説明すべき義務があったにもかかわらずこれを怠った説明義務違反があると主張して、債務不履行に基づく損害賠償を請求した事案である。なお、患者は平成8年から本件病院で統合失調症の治療を受け、過去6回の入院中に自傷行為や自殺企図、無断離院はなく、本件入院中も希死念慮を訴えたことはなかった。 【争点】 精神科病院が任意入院者に対し、無断離院の防止策として徘徊センサーの装着等の措置を講じていないことについて、他の病院と比較した上で入院先を選択する機会を保障するための説明義務を負うか。 【判旨】 原判決中上告人敗訴部分を破棄し、被上告人の請求を棄却した。最高裁は、任意入院者はその症状からみて医療又は保護を図ることが著しく困難な場合を除き開放処遇を受けるものとされており、本件入院当時の医療水準では無断離院の防止策として徘徊センサーの装着等の措置を講ずる必要があるとされていたわけでもないから、本件病院の処遇が医療水準にかなわないものであったとはいえないとした。また、当時多くの精神科病院で上記措置が講じられていたわけではなく、本件病院では医師が病状を把握した上で単独での院内外出の許否を判断することにより自殺防止が図られていたことから、無断離院による自殺の危険性が本件病院において特に高い状況にはなかったと判断した。さらに、患者が具体的な無断離院防止策の内容によって入院先を選択する意向を有していた事情もうかがわれないとして、上告人が他院との比較で入院先選択の機会を保障すべき説明義務を負っていたとはいえず、説明義務違反は認められないと判示した(裁判官全員一致)。