特許権侵害差止等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、「シュープレス用ベルト」に関する特許(本件特許1)及び「製紙用弾性ベルト」に関する特許(本件特許2)の特許権を有する原告(ヤマウチ株式会社)が、被告(イチカワ株式会社)に対し、被告が製造・販売するシュープレス用ベルト(被告各製品)が本件各特許の技術的範囲に属するとして、特許法100条1項及び2項に基づく差止め・廃棄、並びに不法行為に基づく損害賠償2億2000万円及び遅延損害金の支払を求めた事案である。シュープレス用ベルトとは、製紙工程のプレスパートにおいて湿紙の脱水に用いられる製品であり、本件特許1はベルト外周面のポリウレタンにジメチルチオトルエンジアミン(DMTDA)を含有する硬化剤を使用する構成を、本件特許2は排水溝壁面の表面粗さを算術平均粗さ(Ra)2.0μm以下とする構成を、それぞれ特徴としている。 【争点】 主な争点は、(1)被告製品1~3が本件発明1の構成要件1C(DMTDAを含有する硬化剤)を充足するか、(2)被告製品1~3及び5が本件発明2の構成要件2B(排水溝壁面の表面粗さRa2.0μm以下)を充足するか、(3)本件発明1に公然実施による新規性欠如の無効理由があるか、(4)本件発明2の進歩性欠如・実施可能要件違反等の無効理由の有無であった。 【判旨】 請求棄却。裁判所は、まず本件発明1について、被告製品1~3の外周面にDMTDAが含有されていることは争いがなく、製造過程で目止め層等から外周面へ移動したDMTDAが硬化剤として機能していたと認め、構成要件1Cの充足を肯定した。しかし、被告が本件特許1の出願前に日本製紙向けに納品していたベルト(ベルトB)が本件発明1と同一の構成を有し、納品により不特定多数の者が知り得る状態に置かれていたとして、公然実施による新規性欠如(特許法29条1項2号)を認定し、本件特許権1の行使を否定した。原告は、当時の技術水準ではベルトからDMTDAを特定できなかったと主張したが、裁判所は、エタキュアー300(DMTDAの商品名)が出願前からウレタン用硬化剤として注目・実用化されており、サンプルとして分析機関に送付して分析を依頼した蓋然性があったとして、当業者は公然実施発明の内容を知り得たと判断した。本件発明2については、構成要件2Bの「Ra2.0μm以下」は排水溝の全長にわたって充足する必要があると解した上で、被告製品の全反番においてRa2.0μmを超える箇所が存在したことから、構成要件2Bの充足を否定した。