発信者情報開示請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 原告(カバー株式会社)は、動画配信サイトYouTubeにおいてVTuberが出演する動画の配信を業とする株式会社である。氏名不詳者が、原告が著作権を有するVTuberキャラクター「A」のイラスト及び動画から静止画像を切り抜き、これに涙や首つり縄の絵柄と「死ぬA」というテキストを付加し、さらに「【首吊り】Vtuber初!自殺配信するAよー!【ホロライブ/A】」との文言を加えた画像を作成してツイッターに投稿した。原告は、この投稿が原告の著作権(複製権及び公衆送信権)を侵害するものであるとして、被告(ソフトバンク株式会社)に対し、プロバイダ責任制限法5条2項に基づき、本件アカウントにログインした際のIPアドレスに対応する発信者情報(氏名又は名称、住所及び電話番号)の開示を求めた事案である。 【争点】 1 本件ツイートにより原告の著作権が侵害されたことが明らかであるか。特に、原告の二次的創作ライセンス規約により投稿者の利用が許諾されていたか。 2 電話番号を含む発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるか。 3 本件各ログイン(8件)に係る送信が「侵害関連通信」に該当するか。具体的には、侵害情報の送信との間に「相当の関連性」が認められるか、また、固定回線向け電気通信役務によるログインが携帯電話回線を利用した投稿に係る「侵害関連通信」に当たるか。 【判旨】 裁判所は、本件画像と原告動画の静止画像とを対比し、キャラクターのデザイン上の特徴が多数共通しており、本件画像から原告動画の表現上の本質的特徴を直接感得できるとして、少なくとも原告動画に係る公衆送信権の侵害を認めた。被告が主張した二次的創作ライセンス規約による許諾については、本件画像がキャラクターの自殺を内容とする表現であり、規約が禁止する「暴力的な表現」に該当するとして、利用許諾の範囲外であると判断した。 正当な理由については、氏名・住所が虚偽であった場合や転居していた場合等に電話番号が発信者の特定に資する場合が想定されるとして、電話番号を含む開示の正当性を認めた。 侵害関連通信の該当性については、ログインと侵害情報送信との時間的近接性、発信者特定の他の手段の有無等を総合考慮すべきとした上で、本件ツイートからわずか30分後にされた本件ログイン5については相当の関連性を認めた。一方、その余のログイン(7件)については時間的近接性が不十分であるとして関連性を否定した。また、固定回線と携帯電話回線の種類の違いは侵害関連通信該当性を否定する理由にならないと判示した。以上により、本件ログイン5に係る発信者情報の開示のみを認容し、その余の請求を棄却した。