AI概要
【事案の概要】 本件は、登録商標「MG996R」(標準文字商標、第28類・ラジオコントロール式模型の部品等)に係る商標権を有する原告(電子部品等の販売会社)が、被告に対し、被告が「Yahoo!ショッピング」上で運営するオンラインストアにおいて、模型用サーボモーターの販売用ウェブページの商品名に「MG996R」を含む標章を記載したことが商標権侵害に当たるとして、商標法38条5項により算定される損害金4万4900円(出願料相当額1万2000円+登録料相当額3万2900円)及び侵害行為差止めのための通知に要した郵便料金244円の合計4万5144円並びに遅延損害金の支払を求めた事案である。 被告はドロップシッピング方式で輸入商品の再販売事業を営んでおり、本件商品を実際に販売・輸入したことはなく日本国内に商品が存在したこともないこと、「MG996R」は商品の型番にすぎず商標的使用に当たらないこと、故意・過失がないこと、原告に損害が生じていないこと、原告の請求が架空請求に類するもので公序良俗違反・権利濫用に当たることなどを主張して争った。 【争点】 ①被告による商標権侵害行為の有無(標章の商標的使用の成否)、②被告の過失の有無、③原告に生じた損害の有無及び額、④原告の請求が公序良俗違反又は権利濫用に当たるか。 【判旨】 裁判所は、原告の請求を全部認容した。 争点①について、被告が本件ウェブページの商品名として本件標章を記載・公開した行為は、商品に関する広告に標章を付して電磁的方法により提供する行為(商標法2条3項8号)に当たると認定した。標章中の「MG996R」以外の部分(「4Pcs」は数量、その余は普通名称・用途)には出所識別機能がなく、「MG996R」の部分を分離観察でき、本件商標と少なくとも外観及び称呼において類似すると判断した。さらに、「MG996R」は商品名と解される位置に記載され、商品を特定し出所を明らかにする目的で使用されているから、純然たる商標的使用に当たるとして、被告の型番にすぎないとの主張を退けた。 争点②について、商標法39条が準用する特許法103条により過失が推定されるところ、ヤフー社から警告を受けていなかったことは注意義務の履行を基礎づけないこと、商標公報発行後はインターネット等で容易に確認可能であったことから、過失の推定は覆されないとした。 争点③について、商標法38条5項は法定損害賠償制度であり、商標権の取得・維持に通常要する費用に相当する額の損害を認めた。被告が販売数量ゼロ・利益ゼロと主張する点については、同条項は法定損害賠償であってこれらの事情により当然に損害が生じないとはいえず、また販売数量ゼロの立証もないとした。原告が被告以外の者にも同様の請求をしている点についても、実際に金銭を受領した証拠がなく、控除すべき根拠も主張立証されていないとして排斥した。差止通知の郵便料金244円も相当因果関係ある損害と認めた。 争点④について、本件文書の記載内容は被告に不可能を強いるものでも刑法に抵触するものでもなく、公序良俗違反・権利濫用を認めるに足りる事情はないとして、被告の主張を退けた。