殺人、死体遺棄被告事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告人は、令和2年12月頃にマッチングアプリで知り合った男性と交際を始めたが、交際を解消しようとする同男性に対して多額の金銭を交付するようになり、風俗店で勤務して費用を工面していた。令和3年秋頃に妊娠を認識したものの、父親は明らかでなく、誰にも相談しなかった。令和4年3月末頃、男性の転勤先である札幌市へ移り、ホテル等を転々として売春で生計を立てながら同男性に金銭を交付するなどして生活していたところ、同年5月16日、ホテルのユニットバス内で男児を出産した。被告人は、男児の存在によって男性との関係が断たれることを恐れ、殺意をもって、男児を湯を張った浴槽内に沈め、溺水による窒息により死亡させて殺害した(殺人)。その後、犯行の発覚を恐れ、パイプ洗浄剤で死体を溶かそうとしたり、クーラーボックスやシャベルを購入して埋める場所を探すなどした末、同月31日、千歳市内の駅風除室に設置されたキーレスロッカー内にクーラーボックスに入れた死体を隠匿して遺棄した(死体遺棄)。 【判旨(量刑)】 裁判所は、殺人罪について、産まれたばかりの嬰児の生命を奪う重大な犯行であり、浴槽の湯に沈めて殺害するという態様も悪質であると指摘した。動機については、男性との関係を維持したいという点は自己中心的で身勝手であるとしつつも、孤立出産という肉体的精神的負担のかかる状況下で冷静な判断が容易でなかった側面があること、学生時代のいじめ経験等から自己肯定感が低く依存しがちであったこと、男性側も被告人を金銭的に利用していたこと、妊娠の理由が被告人の意思に反するものであったことなど、酌量すべき事情があることは否定できないとした。死体遺棄罪については、自ら産んだ子の遺体を物のように扱う態度が表れた犯行であるが、計画的というよりは場当たり的な行動であったと評価した。以上を踏まえ、嬰児殺の中で重い部類とまでは位置付けられないとし、被告人に一定の反省がみられること、母が出所後の監督を誓約していることなどを考慮し、求刑懲役8年に対し、懲役5年を言い渡した(弁護人の科刑意見は保護観察付き執行猶予)。