AI概要
【事案の概要】 原告(株式会社東日本技術研究所)は、医療機関向け電子カルテシステム「e-J電子カルテ」を開発・販売する会社である。原告は被告会社(株式会社サンテック)との間でe-J電子カルテの販売委託契約を締結していたが、被告会社の従業員であった被告Aが、原告が商談中であったB診療所に対し、原告に無断でe-J電子カルテを315万円で販売・導入した。原告は、(1)販売委託契約の競合禁止条項違反(主位的請求1)、(2)被告らがe-J電子カルテの資料を保有せず販売しない旨の平成25年合意違反(主位的請求2)、(3)e-J電子カルテを使用・販売しない旨の平成27年裁判上の和解違反(主位的請求3)の各債務不履行、及び予備的に(4)不正競争防止法違反(予備的請求1)、(5)著作権(複製権)侵害(予備的請求2)を主張し、被告らに対し連帯して400万円の損害賠償を請求した。 【争点】 (1) 被告会社がB診療所との商談を開始した時点で、原告とB診療所の商談が継続していたか(販売委託契約違反の前提) (2) 平成25年合意により被告らがB診療所導入済みの電子カルテを消去する義務を負ったか (3) 被告らのB診療所における保守行為が平成27年和解で禁じられたe-J電子カルテの「使用」に当たるか (4) 原告がe-J電子カルテのプログラム著作権を有するか、本件導入が複製権侵害に当たるか (5) 被告会社がエム・ビジョンからの再許諾に基づく使用権原を有していたか 【判旨】 裁判所は、主位的請求をいずれも棄却し、予備的請求2(複製権侵害)を一部認容した。争点(1)について、原告の最終見積書は平成24年9月20日付けであり、その後B診療所とのやり取りがあったことを認める証拠はなく、被告会社が販売委託契約解除後に商談に入ったとする被告らの主張に不合理な点はないとした。争点(2)について、平成25年合意書の文言はB診療所に導入済みの電子カルテの消去義務を定めたものとは認められないとした。争点(3)について、被告らの保守行為がe-J電子カルテのソースプログラム等の「使用」に当たることの立証がないとした。争点(4)について、e-J電子カルテはアトム電子カルテのソースコードを一部利用しつつも、原告従業員等が相当の開発作業を行い新たなシステムとして完成させたものであり、原告がプログラム著作権を有すると認定した。B診療所に導入されたシステムはe-J電子カルテとほぼ同一構成であり、複製権侵害に当たるとした。争点(5)について、エム・ビジョンから被告会社への再許諾を裏付ける客観的証拠がなく、販売委託契約や平成25年合意書の内容とも矛盾するとして、使用権原を否定した。損害額については、原告の400万円の見積りにB診療所が応じた証拠はないが、被告会社の行為がなければ原告が少なくとも315万円で販売できたと認め、被告ら連帯で315万円の損害賠償を命じた。