AI概要
【事案の概要】 本件は、合成樹脂加工等を目的とする原告(サンシード株式会社)が、元従業員である被告代表者が設立した被告(コギトケミカル株式会社)に対し、ウェットティッシュ用ボックス容器の製造装置・成形方法等に関する特許権3件について、特許法74条1項に基づく移転登録手続を求めた事案である。原告は、被告代表者が原告在職中(平成24年5月〜平成30年10月15日)に職務発明として本件各発明を完成させたものであり、職務発明取扱規程(甲12規程)により原告が特許を受ける権利を原始取得したと主張した。これに対し被告は、発明完成は退職後であること、甲12規程の制定自体が疑わしいこと等を主張して争った。 【争点】 ①被告代表者が本件各発明を完成させたのが原告在職中であったか、②あらかじめ原告に特許を受ける権利を取得させることを定めた就業規則(甲12規程)が存在したか、の2点が主な争点となった。特に②に関し、甲12規程の制定日・遡及適用の可否、同規程の周知の有無、及び既存の就業規則(乙1)84条との関係が問題となった。 【判旨】 請求棄却。裁判所は、争点②を先に判断し、甲12規程が被告代表者の在職中に適法に制定されたとは認められないと結論づけた。その理由として、①原告は当初甲12規程の作成日を平成26年1月1日としていたが、被告から同規程の文言が平成28年4月施行の改正特許法で初めて採用されたものであると指摘されると、制定日を平成30年9月3日に変遷させた点が信用性を大きく損なうこと、②平成30年9月3日に真実制定されたのであれば遡及適用の趣旨を明記するのが自然であるのにその記載がないこと、③同日に制定されたのであれば被告代表者の退職時に特許を受ける権利の帰属について協議・確認がされるはずであるのに、原告は被告が権利者であることを前提とした行動をとっていたこと、を挙げた。また、既存の就業規則(乙1)84条によっても、協議の上で会社が発明者に対価を支払うことが承継の要件とされているところ、そのような支払はなされておらず、権利承継は認められないとした。さらに、原告が口頭弁論終結直前に主張した黙示の合意についても、時機に遅れた攻撃防御方法であるうえ、明示の就業規則が存在する以上、黙示の合意が成立する余地はないとして排斥した。