AI概要
【事案の概要】 本件は、特定加熱食肉製品(ローストビーフ等)の製造方法に関する特許(特許第5192595号、請求項1〜5)の無効審判の審決取消訴訟である。第1事件では原告(滝沢ハム株式会社)が請求項3〜5に係る部分の審決取消を求め、第2事件では被告(株式会社シンコウフーズ)が請求項1・2に係る部分の審決取消を求めた。本件各発明は、特定加熱食肉製品をスライスした後、還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程を経て、非鉄系脱酸素材とともにガスバリア性包材に密封し、各ミオグロビンの割合を所定範囲に制御することで、スライス後の褐変を防止し優れた肉色を維持する製造方法に関するものである。特許庁は、請求項1・2は進歩性を欠き無効、請求項3〜5は進歩性を有し有効と判断した。 【争点】 (1) 主引用発明(甲1発明)のローストビーフが特定加熱食肉製品に該当するか(一致点の認定の誤り)、(2) 相違点1〜3(酸素化工程、非鉄系脱酸素材の使用、ミオグロビン割合の特定)の容易想到性、(3) 本件発明2における鉄系脱酸素材の併用割合の容易想到性、(4) 本件発明5における「ガス置換をすることなく」密封するという構成の容易想到性(相違点6)、(5) 本件発明3・4における「酸素濃度が検出限界以下となった後に真空引きする」構成の容易想到性(相違点4)。 【判旨】 知財高裁は、被告・原告双方の請求をいずれも棄却した。請求項1・2について、裁判所は、甲1発明のローストビーフは特定加熱食肉製品であるか少なくともそれを含むと認定し、一致点の認定に誤りはないとした。相違点1(酸素化工程)については、甲2に記載された食品の鮮度と赤色を維持するための技術的事項を採用することに困難性はないと判断した。相違点2(非鉄系脱酸素材)についても、甲3に記載されたミオグロビンの変化に基づく肉色保持技術を適用することは容易であるとした。相違点3(ミオグロビン割合)については、相違点1・2の構成を採用すれば所定のパラメータを満たす蓋然性が高く、容易想到であるとした。本件発明2の鉄系脱酸素材の併用割合についても、顕著な作用効果は認められないとして進歩性を否定した。他方、請求項3〜5について、本件発明5の相違点6(ガス置換なし)については、甲1発明ではガス置換が課題解決に不可欠な事項であり、これを除外する動機付けはないとして進歩性を肯定した。本件発明3の相違点4(酸素濃度検出限界以下後の真空引き)についても、周知の真空引き技術を適用しても当該構成には至らないとして進歩性を肯定し、審決の判断に誤りはないと結論づけた。