AI概要
【事案の概要】 本件は、弁護士でありYouTuberでもある原告と、YouTube用の動画編集業務を行う被告会社(代表取締役が被告B)との間のトラブルに関する本訴・反訴の事案である。原告は、被告会社に動画編集を依頼し、1本3万円の報酬で被告Bが撮影・編集した動画を原告のYouTubeチャンネルにアップロードしていた。しかし、原告が令和3年7月頃から別の編集者Cにより安い報酬で編集を依頼するようになったところ、Cが被告会社に無断で二段階認証を設定したため、被告Bがアカウントにログインできなくなり、被告Bはパスワードを変更した。これを受け、原告は被告らに対し、パスワード変更による権利侵害、被告会社ウェブサイトへのサムネイル掲載による肖像権侵害、未公開動画の引渡義務違反を理由に230万円等の損害賠償を求めた(本訴)。一方、被告らは、原告がLINEグループ(約200名)やGoogleMapのレビューに被告らを誹謗中傷する投稿をして名誉を毀損したとして、被告会社が121万円、被告Bが約78万円の損害賠償を求めた(反訴)。 【争点】 本訴の主な争点は、①パスワード変更による原告の権利侵害の成否、②サムネイル掲載による肖像権侵害の成否、③未公開動画データの引渡義務違反の有無であった。反訴の主な争点は、④原告のLINEグループへの投稿(被告Bを「詐欺師のくそ粘着」と呼ぶ等)やGoogleMapへの投稿による名誉毀損・人格的利益侵害の成否、⑤真実性の抗弁の成否、⑥損害額であった。 【判旨】 裁判所は、原告の本訴請求をいずれも棄却し、反訴請求を一部認容した。本訴について、①パスワード変更に関しては、チャンネルは被告会社名義のアカウントに紐づき、原告も契約書で被告会社がアカウント所有者であることを認めていたことから、管理権限は被告会社にあり、パスワード変更は原告の権利を侵害しないと判断した。②肖像権侵害に関しては、契約書9条2項で原告が被告会社のウェブサイトへの実績掲載を包括的に許可しており、契約の無効事由も解除事由も認められないとして否定した。③未公開動画に関しては、被告会社は既にデータを引き渡しており、動画が公開されていないのは原告が編集内容の承諾をしなかったためであるとして義務違反を否定した。反訴について、裁判所は、LINEグループへの投稿のうち、データ引渡し拒否、チャンネルを人質にした脅迫的要求、高額な編集料の請求、契約書なしの著作権・肖像権無視に関する各記載が被告Bの名誉を毀損すると認定した。ただし、被告Bと被告会社の関係がLINE投稿上明示されていなかったため、被告会社に対する名誉毀損は否定した。「詐欺師のくそ粘着」との投稿は名誉毀損には当たらないが、社会通念上許容される限度を超える侮辱行為として被告Bの人格的利益を侵害すると判断した。GoogleMapへの投稿は被告会社の名誉を毀損すると認定した。真実性の抗弁は、公共の利害に関する事実とは認められず、公益目的も認められないとして排斥した。損害額は、被告Bにつき12万円(慰謝料10万円+弁護士費用2万円)、被告会社につき12万円(慰謝料10万円+弁護士費用2万円)と認定された。