生存権を守るための行政処分取消請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 厚生労働大臣は、平成25年5月、生活扶助基準の改定(本件改定)を行い、①社会保障審議会生活保護基準部会の検証結果に基づき、生活扶助基準の年齢・世帯人員・居住地域別の較差を是正する「ゆがみ調整」と、②平成20年から平成23年までの消費者物価指数の下落(変化率マイナス4.78%)を反映させる「デフレ調整」を一体的に実施した。宮崎市内で生活保護を受給する原告らは、宮崎市福祉事務所長が本件改定に基づき平成25年7月23日付けで行った各保護変更決定について、本件改定が憲法25条及び生活保護法3条・8条等に違反する違憲・違法なものであると主張し、各変更決定の取消しを求めた。原告らは審査請求及び再審査請求をいずれも棄却された後、平成26年9月に本件訴えを提起した。 【争点】 主な争点は、①ゆがみ調整に係る厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤・欠落があるか、②デフレ調整に係る同大臣の判断の過程及び手続に過誤・欠落があるか、③本件各変更決定に係る理由付記の瑕疵の有無である。原告らは、ゆがみ調整について、比較対象である第1・十分位層から生活保護受給世帯を除外していないこと、2分の1処理が基準部会の検証結果を恣意的に改変していること等を主張した。デフレ調整については、基準部会等の専門家による検討を経ずに行われたこと、生活扶助相当CPIのウエイトが生活保護受給世帯の消費構造を適切に反映していないこと等を主張した。 【判旨】 裁判所は、生活扶助基準の改定について、厚生労働大臣に専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められるとしつつ、判断の過程及び手続における過誤・欠落の有無を統計等の客観的数値との合理的関連性や専門的知見との整合性の観点から審査する枠組み(判断過程審査)を採用した。ゆがみ調整については、比較対象を第1・十分位層としたことや2分の1処理を含めても、統計等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠くとはいえないとした。しかし、デフレ調整については、①基準部会等の外部専門家による検討を経ずに行われたこと、②起点とした平成20年時点の一般低所得世帯の消費実態が不明であること、③生活扶助相当CPIのウエイトが生活保護受給世帯の消費構造と乖離しており、パソコン等の価格下落の影響が過大に評価された可能性があること、④生活保護受給世帯の約96%が減額となる重大な影響があることを指摘し、厚生労働大臣の判断は統計等の客観的数値との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠き、裁量権の範囲を逸脱・濫用したものとして違法であると判断した。本件改定に基づく各変更決定をいずれも取り消した。