不正競争行為差止等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、いずれも医療機関に対して麻酔科医を紹介する事業を営む原告(エヌアイラボ株式会社)と被告(エムスリーキャリア株式会社)との間の紛争である。原告は、関西圏に特化して、夜間・休日の緊急手術に対応可能な麻酔科医を待機料なしでウェブサイト上のシステムを用いてマッチング・紹介するサービスを提供していた。被告も同種のサービス「Dr.Express」を「アネナビ」サイト上で提供していた。 本訴において、原告は、被告が医療機関に対し、自社サービスと「他社様」を比較する文書やメールを用いて行った告知行為(本件告知等行為)が、不正競争防止法2条1項21号(競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽事実の告知・流布)又は同項20号(品質等誤認惹起表示)に該当するとして、差止め、信用回復措置及び1100万円の損害賠償を求めた。反訴において、被告は、原告の取締役P1が被告従業員から取引先医療機関の情報等(本件情報)を取得した行為が同項4号・5号の営業秘密不正取得行為に、また原告が被告の元業務委託先P2を通じて営業活動をさせた行為が同項8号の不正競争に該当するとして、2865万2500円の損害賠償を求めた。 【争点】 本訴に関する主な争点は、(1)本件告知等行為が「原告の」営業上の信用を害するものか(21号の要件)、(2)告知内容が虚偽の事実に当たるか、(3)被告役務の品質について誤認させる表示に当たるか(20号)であった。反訴に関する主な争点は、(1)本件情報が不正競争防止法上の「営業秘密」に当たるか、(2)P2による情報開示が不正競争に当たるか、(3)これらの行為が不法行為を構成するかであった。 【判旨】 裁判所は、本訴・反訴の請求をいずれも棄却した。 本訴について、裁判所は、本件文書及びメールには原告の社名やサービス名が記載されておらず、「アネナビやアネステーションに類似した名称のサービス」や「他社様」という表現は、原告のみを指すものではなく、麻酔科医紹介サービスを提供する複数の競合他社を広く指すものと需要者は理解すると認定した。関西圏において同種サービスを提供するのが原告と被告のみであるとの原告の主張についても、比較項目が医師のマッチング等の一般的なものであること、比較対象が広く紹介サービス一般を対象としていること等から、本件告知等行為が原告に関するものと特定されているとはいえないと判断した。また、品質誤認惹起(20号)についても、「他社様」のバックアップ体制等を「なし」とする記載は適切を欠くきらいがあるものの、抽象的な比較の対象との対比において被告役務の品質が著しく優良と誤認させるとまではいえないとした。 反訴について、裁判所は、本件情報(取引先医療機関名・担当者名、手術状況、契約内容等)はいずれも被告の管理下のみに属する情報ではなく、対象医療機関に問い合わせれば得られる性質の情報であるとして、非公知性を欠くと判断し、「営業秘密」に該当しないとした。P2による情報開示についても、開示された営業秘密が具体的に特定されていないとして不正競争に当たらないとし、予備的な不法行為の主張も退けた。