AI概要
【事案の概要】 本件は、「水分制御装置、水分制御方法」等の名称の発明について特許出願をした原告(エバートロン ホールディングス ピーティーイー リミテッド)が、拒絶査定不服審判の請求不成立審決の取消しを求めた事案である。原告の発明(本件補正発明)は、電極に交流又は直流の電圧を印加して電場・電磁波等を発生させ、電極に対向して配置された物質の内部に存在する水分の界面張力を低下させた状態とすることを特徴とする水分制御装置に関するものである。特許庁は、本件補正発明が先行文献(甲1文献・特開2016-129672号)に記載されたフライヤーの発明と技術常識に基づき当業者が容易に発明できたものであるとして、補正を却下し、審判請求を不成立とした。 【争点】 主な争点は、(1)本件補正発明の進歩性(独立特許要件)の有無、すなわち引用発明であるフライヤーとの相違点(物質内部の水分の界面張力を低下させる水分制御装置であるか否か)が容易想到であるか、(2)甲2文献ないし甲5文献から「エマルションの小滴化は界面張力の低下を原因とする」との技術常識を認定できるか、(3)審判手続において甲2〜甲5文献を新たに提示して判断したことが適正手続違背に当たるかの3点である。 【判旨】 知的財産高等裁判所は、原告の請求を棄却した。進歩性の判断について、裁判所は、甲1文献に食用油中で電磁波により長鎖脂肪酸塩が水の表面近傍で振動して水粒が細粒化されることが記載されていること、及び水/油型エマルションで水粒が小さくなることが水の界面張力の低下によるものであることは優先日当時の技術常識であったことを認定し、当業者が引用発明のフライヤーを「物質の内部に存在する水分の界面張力を低下させた状態とする水分制御装置」と容易に想到できると判断した。原告が主張する効果①〜③についても、特許請求の範囲に界面張力の測定方法や目標値等の特定がなく、予測できない顕著な効果とは認められないとした。手続違反の主張に対しては、甲2〜甲5文献は拒絶査定で既に認定されていた技術事項を裏付ける技術常識の資料にすぎず、査定の理由と異なる拒絶理由には当たらないとして、適正手続違背を否定した。