発信者情報開示請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、動画の著作権を有する原告(株式会社グルーヴ・ラボ)が、氏名不詳者らがP2P方式のファイル共有ソフトウェア「BitTorrent」を使用して原告の著作物である動画2本を送信可能化したことにより、送信可能化権を侵害されたと主張して、インターネットサービスプロバイダである被告(KDDI株式会社)に対し、プロバイダ責任制限法5条1項に基づき、発信者情報(契約者の氏名又は名称、住所及び電子メールアドレス)の開示を求めた事案である。 BitTorrentは、特定のファイルを「ピース」と呼ばれる断片に細分化し、ネットワーク上のユーザーに分散して共有させる仕組みである。ファイル全体のダウンロードが完了したユーザーは「シーダー」となり、完了前のユーザーは「リーチャー」と呼ばれるが、リーチャーであっても既に取得したピースを他のユーザーにアップロードする状態に置かれる。原告は調査会社に依頼し、μtorrentを用いて、令和4年6月29日及び同月30日に、被告のサービスを利用する発信者2名が原告の動画ファイルのアップロードを行っていたことを確認した。 【争点】 本件の争点は、権利侵害の明白性であり、具体的には原告が依頼した調査会社による調査の信用性が争われた。被告は、調査会社がIPアドレス特定に係る専門技術を有するか不明であること、及び第三者がIPアドレスを偽装した可能性があることを指摘し、調査の信用性を争った。 【判旨】 裁判所は、原告の請求を全部認容した。まず、BitTorrentの仕組みと調査会社の調査内容から、発信者らがそれぞれ動画ファイルのピースをダウンロードして不特定多数の者からの求めに応じ自動的に送信し得る状態にしたと認定し、原告の送信可能化権の侵害を認めた。 被告の調査の信用性に関する主張については、被告が指摘する事情はいずれも抽象的な可能性の指摘にとどまり、調査の信用性を具体的に左右するものではないと判断した。他方、原告は調査の具体的内容を詳細に説明し、IPアドレスや品番等が表示されたスクリーンショットを裏付け資料として提出しており、これらを踏まえれば調査の信用性は覆らないとした。また、違法性阻却事由の存在をうかがわせる事情も認められないとして、権利侵害の明白性を肯定した。さらに、原告が発信者に対する損害賠償請求を予定していることから、発信者情報の開示を受けるべき正当な理由も認めた。