AI概要
【事案の概要】 原告(株式会社マネースクエアHD)は、「金融商品取引管理装置」等に関する特許(特許第6154978号)の特許権者である。本件特許は、FX取引において、相場価格の変動に応じて等しい値幅で設定された複数の売り注文のうち、最も高い売り注文が約定すると、さらに所定価格だけ高い売り注文を自動生成する「シフト機能」を特徴とする発明に係るものである。被告(株式会社外為オンライン)は、FX自動売買サービス「iサイクル」を顧客に提供しており、そのサーバが本件特許の技術的範囲に属することは、先行する差止訴訟の確定判決で認定済みであった。原告は、被告サーバの使用が本件発明の実施に当たるとして、特許法102条に基づき11億9000万円の損害賠償を請求した。なお、原告自身はFX取引業を営んでおらず、完全子会社である株式会社マネースクエアが実際のFX取引業を行っていた。 【争点】 主な争点は、①本件特許の無効理由の有無(乙5発明を主引例とする進歩性欠如)、②損害額の算定方法(特許法102条1項の類推適用の可否、同条2項の適用の可否、同条3項に基づく実施料相当額)、③消滅時効の成否であった。特に損害額の算定においては、原告自身が特許発明を実施していないことから、同条1項・2項の適用が認められるかが重要な論点となった。 【判旨】 裁判所は、まず争点①について、乙5発明と乙6発明の相違点(最も高い売り注文が約定した際に売り注文価格を上昇させる構成の有無)に関し、乙6発明を組み合わせても相違点に係る本件発明の構成には至らないとして、進歩性欠如の無効理由を否定した。乙7発明・乙8発明との組合せについても、一定の価格帯を前提とする乙5発明との技術思想の相違から動機付けを欠くとした。次に損害額について、特許法102条1項は、特許権者等が発明を実施していない場合には適用も類推適用もされないとし、原告が本件期間を通じてFX取引業を営んでいなかった以上、同項の適用を否定した。親子会社関係に基づく主張も、別法人であることを理由に退けた。同条2項についても同様の理由で適用を否定した。消滅時効については、被告サーバが本件特許発明の技術的範囲に属すると判断するに足りる事実の認識時期を前訴第1審判決言渡日(平成30年10月24日)とし、本件訴訟提起(令和2年7月9日)から3年を遡った平成29年7月9日以降の損害のみ認容した。最終的に、特許法102条3項に基づき、侵害品の売上高(手数料収入及びトレーディング損益)に合理的な実施料率を乗じて算定し、弁護士費用等を加えた2014万9093円を認容した。請求額11億9000万円に対する認容額は約1.7%にとどまった。