AI概要
【事案の概要】 本件は、学校法人が運営する北海道内の大学で教授として勤務していた原告が、懲戒解雇の無効を主張し、雇用契約上の地位確認、未払賃金及び慰謝料等の支払を求めた事案である。 原告は、大学が受け入れた外国人留学生の日本語能力レベルに関する問題をめぐり、前学長が外部理事を訪問した際に同行したこと(懲戒事由③)、前学長が道政記者クラブで行った記者会見に同行したこと(懲戒事由①)、ツイッターで大学の内部情報を漏洩し誹謗中傷する投稿をしたこと(懲戒事由②)、及び5年間で65回開催された教授会に8回しか出席しなかったこと(懲戒事由④)を理由に、令和2年6月29日付けで懲戒解雇された。背景には、外国人留学生の日本語能力が文部科学省等の求める水準(N2)に達していないというコンプライアンス上の問題をめぐる前学長と大学経営陣との深刻な対立があった。 【争点】 主な争点は、①本件懲戒解雇の有効性、②定年後再雇用の成否、③原告の給与等の額、④本件懲戒解雇が不法行為に当たるか及び損害額である。特に、前学長の記者会見や外部理事訪問への「同行」が懲戒解雇に値する非違行為といえるか、ツイッター投稿が大学の社会的評価を低下させたか、教授会の長期欠席に正当な理由があったかが中心的に争われた。 【判旨】 裁判所は、4つの懲戒事由のいずれについても懲戒事由該当性を否定し、本件懲戒解雇は無効であると判断した。 懲戒事由①③(記者会見・外部理事訪問への同行)については、いずれも専ら前学長が主体的に行ったものであり、原告は記者会見で後方に座って発言もしておらず、交付書面の作成にも関与しておらず、原告の同行による寄与は精神的なものにとどまり、大学の名誉・信用の毀損を具体的に助長促進したとは認められないとした。 懲戒事由②(ツイッター投稿)については、投稿者名は原告の実名ではなく、投稿内容も不明確・婉曲的・抽象的なものが多く、一般読者の普通の注意と読み方を基準にすれば、大学に関する事実を摘示するものとは認められず、社会的評価を低下させたとはいえないとした。 懲戒事由④(教授会欠席)については、原告がリウマチ性多発筋痛症に罹患していたこと、人事考課で4.7(5段階中)の高評価を得ており欠席が問題視されていなかったこと、注意・指導・処分を受けたことがなかったことから、就業規則に抵触する程度には至っていないとした。 定年後再雇用については、就業規則及び学園報の周知内容に基づき、原告には満65歳まで雇用が継続されるとの合理的期待があるとして、再雇用を認めた。 さらに、被告が前学長と対立する中で、同行したにすぎない原告に対し各事由を慎重に検討することなく懲戒解雇に及んだことは不法行為に当たるとし、慰謝料50万円及び弁護士費用5万円の合計55万円の損害賠償を認容した。