AI概要
【事案の概要】 控訴人(グローシップ・パートナーズ株式会社)の元従業員Aが、控訴人在職中に作成したAI関連のプレゼンテーション用スライドのデータ(本件データ)を、被控訴人会社(ZEIN株式会社)への転籍後に流用して新たなスライドを作成し、被控訴人会社代表者である被控訴人Yに送付した。控訴人は、被控訴人らに対し、①著作権(複製権又は翻案権)侵害、②営業秘密の不正取得、③被控訴人Yによる控訴人従業員の被控訴人会社への移籍勧誘及び顧客に対する取引切換えの勧奨が不法行為又は債務不履行に当たるとして、連帯して損害の一部である1億円及び遅延損害金の支払を求めた。原審(東京地裁)は控訴人の請求を全部棄却したため、控訴人が控訴した。 【争点】 ①本件データの営業秘密該当性、②本件データの著作物性、③本件合意書に係る合意の当事者(控訴人か、控訴人代表者B個人か)、④本件合意書に係る契約違反(情報持ち出し禁止、従業員移籍勧誘禁止、顧客取引切換え勧奨禁止)の有無、⑤被控訴人らの背任行為・不法行為の成否。 【判旨】 控訴棄却。知財高裁は、まず本件データについて、AIに関する公知かつ初歩的な情報を寄せ集めたものであり、顧客へのプレゼンテーション用資料として作成され秘密情報である旨の表示もないことから、非公知性及び秘密管理性を欠き営業秘密に該当しないと判断した。著作物性についても原審同様に否定した。本件合意書の当事者については、控訴人が5項・6項に限り控訴人と被控訴人Y間の合意であると主張したが、各条項で契約当事者を異にする特段の事情は認められず、合意書全体がB個人と被控訴人Yとの間の合意と認定した。従業員の移籍については、被控訴人会社に移籍した従業員の大多数がもともと被控訴人Yと親交があり同人を追って控訴人に入社した者であること、Bの経営介入による混乱を背景に自らの判断で移籍したと認められること、被控訴人Yのメールも新会社設立の説明にとどまり自由競争を逸脱する勧誘とはいえないことを認定した。顧客への取引切換え勧奨についても、各社に対する証拠を個別に検討した上で、自由競争を逸脱する態様での勧奨を認めるに足りる証拠はないとして、不法行為の成立を否定した。