AI概要
【事案の概要】 本件は、陸上自衛隊第14特科隊に所属していた亡Cが、長時間勤務や上司の限度を超えた指導等によりうつ病を発症して自殺したとして、亡Cの父母である原告らが、被告(国)に対し、安全配慮義務違反に基づく損害賠償として各4515万7000円及び遅延損害金の支払を求めた事案である。亡Cは、特科隊本部第3科の指揮小隊長として勤務し、例年の約2倍の自衛官候補生の受入れ業務や野営訓練等に従事していた。自殺前1か月の超過勤務時間は約168時間、直近1か月は約216時間に達していた。亡Cの自殺は公務災害として認定されている。 【争点】 主な争点は、①E元隊長による指導が社会通念上許容される限度を超えたパワーハラスメントに該当するか、②損害額(死亡慰謝料額、遺族補償一時金等の控除の可否・範囲)である。被告は、亡Cの自殺が長時間勤務と上司の指導上の問題に起因すること及び安全配慮義務違反があること自体は争わなかったが、E元隊長の指導がパワーハラスメントに当たるとの評価や損害額を争った。 【判旨】 裁判所は、亡Cが多忙な部署において長期間にわたり長時間の超過勤務を余儀なくされ、超過勤務の実情を踏まえた上司らによる適切な配慮もされず、組織的な支援や対応を受けることがないまま疲弊し自殺に至ったと認定した。E元隊長の指導については、同隊長は亡Cの直属の上司ではなく日常的に指導する関係になかったこと、射撃審査の再報告指示は第3科全体に向けたものであったこと、再検討と再報告の指示自体は合理的な対応であったことなどから、社会通念上許容される限度を超えたパワーハラスメントとまでは認められないとした。損害額については、死亡慰謝料2600万円を認容し、死亡逸失利益5450万4000円から遺族補償一時金976万4000円を控除し、葬祭料は葬祭補償控除後の48万2610円、弁護士費用712万円を認め、原告ら各自につき3917万1305円及び遅延損害金の支払を命じた。