旧優生保護法被害損害賠償請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、旧優生保護法(昭和23年法律第156号)に基づき強制不妊手術(優生手術)を受けた原告が、国に対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償として3300万円及び遅延損害金の支払を求めた事案である。原告は先天性の聴覚障害(ろう)及び視野狭窄を有する女性であり、昭和45年10月頃(当時未成年)、結婚式前に父母らに連れられて産婦人科医院において、手術の理由や内容について何ら説明を受けることなく開腹手術を受けた。原告は、平成30年8月に静岡県聴覚障害者協会の事務局次長から優生保護法に基づく優生手術について説明を受け、自身が受けた手術が優生手術であったことを初めて認識し、平成31年1月に本件訴訟を提起した。原告は、選択的に、①優生保護法の立法行為の違法、②厚生労働大臣による優生政策の推進・優生手術実施の違法、③被害回復措置に係る立法不作為の違法、④厚生労働大臣の差別解消義務等の不作為の違法を主張した。 【争点】 主要な争点は、①原告が優生保護法に基づく優生手術を受けたか、②被告に国家賠償法上の違法性が認められるか、③原告の損害額、④民法724条後段の除斥期間の適用及び効果制限の可否であった。特に④について、被告は、除斥期間の起算点は優生手術を受けた昭和45年10月であり、20年の経過により損害賠償請求権は消滅していると主張した。 【判旨】 裁判所は、原告が優生保護法4条に基づく優生手術を受けたと認定した上で、優生保護法4条に基づく優生手術は、憲法13条により保障された子を産むか否かについて意思決定をする自由を侵害し、また憲法14条1項の法の下の平等に反するものであり、同法が違憲であることは明らかであるとした。そして、厚生大臣は憲法尊重擁護義務に基づき優生手術を実施しないようにすべき職務上の注意義務を負っていたにもかかわらず、むしろ積極的に優生手術を推進する政策を行っており、国家賠償法上の違法性が認められるとした。除斥期間については、起算点は昭和45年10月頃であり形式的には経過しているものの、被告が全国的かつ組織的な施策によって被害者が優生手術を強いられた事実を知り得ない状況を殊更に作出し、そのために原告がその事実を知ることができなかったという事実関係の下では、除斥期間の効果を制限するのが相当であるとして、請求権の消滅を否定した。損害額については、慰謝料1500万円及び弁護士費用150万円の合計1650万円を認容した。